新たなDNA鑑定で犯人を特定
迷宮入りかと思われたこの事件に光を射したのが、現代のDNA鑑定です。リヴァプール大学の生化学者Jari Louhelainen氏と研究チームは、ジャックのものと思われる体液が付着した被害者のショールに対し、新たにDNA鑑定を実施。衣服は、4番目の犠牲者であるキャサリン・エドウッズのもので、血液の他に精液が見つかっています。
そこからチームは、「ミトコンドリアDNA」と呼ばれる、母性遺伝のDNAを摘出し、拡大観察。そのDNAを、現在も存命中である被害者エドウッズと、犯人の疑いのあるコズミンスキーの両子孫から採取したDNAと比較しました。
すると、衣服のDNAがコズミンスキーの子孫のDNAと見事に一致したのです。さらに彼はポーロンド系ユダヤ人であり、犯行現場の落書きの件ともつながります。また今回のDNA鑑定では、犯人が茶色の瞳と毛髪をしていることが特定できており、それもコズミンスキーと一致するのです。
今回の研究は、これまで行われてきた中でも、分子レベルで実施された初の詳細な研究であり、結果にほぼ間違いないとのこと。
しかし、この結果が決定的でないとする意見もあります。
というのも、衣服から摘出されたミトコンドリアDNAは、主に科学捜査で使われる核DNAほど正確な分析ができないのです。核DNAの遺伝による変異率は0.3%以下なのですが、ミトコンドリアDNAはそれよりもずっと高く正確性に劣ります。
ただ、驚くほど、ジャックとコズミンスキーに共通点が見られるのも事実です。理髪師は、(あくまでも中世時代の話ですが)簡単な外科手術も行なっており、コズミンスキーも医術に興味があったのかもしれません。
残るは筆跡の問題ですが、もし彼の精神病が多重人格的なものだとすれば、ジャック人格で筆跡が変わった…ということも有り得ます。未だに謎が残る事件ではありますが、一旦幕を引いたといってもいい研究結果なのではないでしょうか。