Point
■タイタンの窒素の大気の層の下に、氷の岩盤から成る巨大な通路が存在することが判明
■氷の通路は、タイタンの赤道に沿うように、6,300キロメートルにわたって存在
■氷の火山の噴火によって噴出した水・アンモニア・メタンなどが要因と考えられる
土星の最大の衛星「タイタン」は、ギリシャ神話に登場する巨神族を表すその名のとおり、巨大な謎に包まれた天体だ。
分厚い窒素の層が表面を覆い隠しているため、その姿は容易に見ることができない。
最近の研究で、これまで神秘のベールに包まれてきたタイタンが、ようやくその奇妙な地質の特性を見せはじめた。霧の下に、氷の岩盤から成る巨大な「通路」が存在することが分かったのだ。
アリゾナ大学の天文学者ケイトリン・グリフィス氏らによる論文が、「Nature Astronomy」に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0756-5
霧の下からドーン! 巨大な「氷の通路」が出現
氷の通路は、タイタンの赤道に沿うように6,300キロメートルにわたって伸びている。これは、タイタン全体の直径の約40パーセントに匹敵する長さだ。
グリフィス氏らは、探査機カッシーニが撮影した数千枚の画像データを分析。赤外分光計を使い、タイタンを覆う不透明な霧の向こう側を覗き見ようと試みた。
調査には、主成分分析 (principal component analysis, PCA) という技術が用いられた。データ中の天体表面の曖昧な特性を見つけ、正確にあぶり出すことで、タイタンの赤道を巨大な氷の通路が貫いていることを特定した。
このことから、氷は天体表面に均一に広がっているわけではないが、決してランダムに点在するのではなく、熱帯表面に多く分布することが明らかになった。氷に富んだ物質の多くは、東経30度・北緯15度の地点と西経110度・南緯15度の地点の間を、線を描くように分布していた。