■脳には学習によって形成される特定の視覚対象にだけ反応する、神経細胞群が存在する
■子供の頃ポケモンを遊んでいた大人の脳機能を調べたところ、ポケモンの画像に反応する細胞群が見つかる
■その結果は、対象をどのように見ているかによって反応領域がわかるとする「エキセントリシティ・バイアス」説を支持している
ポケモン細胞ゲットだぜ!?
子供の頃ポケモンを遊んでいた大人の脳をスキャンしたところ、アニメキャラクターに対して、より反応する脳の領域が発見された。
面白いのはこの研究によって、脳が視覚情報をどのように処理しているのか新たな洞察が得られたことだ。
「Nature Human Behavior」で発表された研究では、5歳から8歳のころポケモンを遊んだことがあり、大人になってから再び遊び始めた生粋のポケモントレーナー11人と、ポケモン初心者11人が対象とされた。
https://www.nature.com/articles/s41562-019-0592-8
始めに、このポケモントレーナーたちが本物かどうか確かめるために、「ピッピ」と「ラッキー」といったキャラの名前を区別できるのかどうかがテストされている。もちろんよく訓練されたトレーナーたちが間違えるはずはない問題だ。
次に、150体のオリジナルポケモンの画像と共に他の動物や顔、車、言葉、廊下や他のアニメ画像を見せたときの脳の反応をスキャンした。
するとその結果、生粋のプレーヤーたちに、他の画像よりもポケモンの画像に強く反応する特異な領域が発見されたのだ。この領域は後頭側頭溝で見つかったが、初心者たちの脳では、これらの領域はポケモンに反応しなかった。つまり、ポケモンを認識するポケモン細胞が見つかったことになる。
小さな頃に何時間もポケモンをプレーしたことで脳に変化が起きたというのは、驚くものではない。同じものを十分長く見ていれば、他のものでも同じような変化が見られるだろう。
ある特定の画像にだけ反応する細胞群があることはよく知られている。例えば、『フレンズ』のレイチェルを演じたジェニファー・アニストンにだけ反応する「ジェニファー・アニストン細胞」というのが有名だ。
しかし、これらの認識がどのように学習されるのかは分かっていない。それを確かめるには子供を対象に、視覚刺激による学習実験をすることが必要だが、何時間も子供に同じ画像を見せ続けるという実験は倫理的に問題があるだろう。なので、現状は猿を対象にした実験しか行われていない。
そこでポケモンの登場である。カリフォルニア州立大学バークレー校の心理学者ジェシー・ゴメスは、自身も子供の頃ポケモンを遊んだ一人であるが、ポケモンを遊ぶという経験が、この実験を代替しうることに気づいたのだ。
今回のポケモンを使った実験の結果は、「エキセントリシティ・バイアス」と呼ばれる説を支持するものだ。
この説によると、見ている画像を大きさや、その画像を中心視野かあるいは周辺視野で見ているかによって、どの脳領域が反応するかを予測できるという。
中心視野は視力が高く、細かいものを見れる領域で、周辺視野はそれ意外の視力の低い領域だ。
この領域は画像を直視していることに関連している。ポケモンを遊ぶ時、子どもたちは画像を周辺視野だけで見ているわけではないのだ。
ポケモン細胞は何も視覚情報だけに限られるものではないかもしれない。ゲームの中でポケモンが現れる時、特定の音がなるのであるが、その音に反応する聴覚野においてもポケモン細胞もあるかもしれないと、ゴメス氏は考えている。