Point
■心理学的な「脱線」とは、過去の自分と現在の自分との間に乖離を抱くことで自我の安定性が失われることを指す
■調査の結果、「うつ病」傾向にある学生たちはその後、「脱線」傾向を強くすることが判明した
■しかし反対に、「脱線」症状が先立っているとその後「うつ病」傾向は下降していった
「過去の自分」と「現在の自分」は、本当に同じ人間なのだろうか?
ここに乖離を感じることで、自我の安定性が失われてしまうという症状がある。まだ病気として認められているわけではないが、この症状は「脱線(derailment)」と呼ばれ、症状的には「うつ病」に似たものだ。そして両者には大きな関係性があるといわれている。
しかし脱線病はこれまであまり詳しく研究されておらず、「脱線がうつ病を招くのか」あるいは「うつ病の結果として脱線が生じるのか」不明瞭なままであった。
ところがアメリカ・コーネル大学の研究によると、うつ病が脱線を招く可能性は高いが、反対に脱線から始まると「うつ病」傾向は現減少することが判明したようだ。
研究の詳細は、4月5日付けで「Clinical Psychological Science」上に掲載されている。
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/2167702619829748?journalCode=cpxa
「うつ病」が先か「脱線」が先か
主任研究員のケイリン・ラトナー氏によると、うつ病患者のほとんどがかつて抱いていた目標を失うことで、現在のモチベーションを保つことに苦心するという。
その後彼らは友人や社会関係から身を引き、孤独な状態に陥ってしまう。
このプロセスが脱線病を発症する流れとなっているが、同時に脱線が悪化することで「うつ病」を発症する可能性も考えられる。
こうした理由からラトナー氏と研究チームは、「うつ病が脱線を促すこと」と「脱線がうつ病を促すこと」という2つの可能性に焦点を当てて調査を開始した。