良くも悪くも「地域に根づく」存在
またこのチャイムは、大人にとっては非公式な「終業」の合図であり、子どもにとっては非公式な「帰宅」の合図としても機能しており、ときに街のイベントについても防災無線によってリマインドされる。
さらに、より小さな市町村であれば、赤ちゃんの誕生や訃報についても防災無線を通じてアナウンスされることがあるようだ。
とはいえ、防災無線は何と言っても文字通り「防災」がメインの仕事だ。2011年の東日本大震災の際に、市民がスマートフォンなどで撮影した映像には、防災無線からの避難を誘導する声がはっきりと聞こえていた。

しかし、このシステムには問題もある。東日本大震災の際には、そんな深刻な被害が出るはずがないとたかをくくって、防災無線の声を無視した人々が被害に遭ったケースもあるようだ。
また、住居の場所によっては「騒音」による被害を訴える人もいる。およそ85デシベルの音を出す防災無線は、スピーカーから50メートル離れた場所では「15メートル先を走る貨物列車」と同程度の騒音を発しているのだ。
そうした問題こそあれど、防災無線は今や日本に根づいた「文化」ともいえる、ユニークで役に立つ存在だ。そんな防災無線に感謝しつつ、今日は5時のメロディにゆっくりと耳を傾けてみてはいかがだろうか。