Point
■一般的に水が凍るときは一番冷たい場所から周辺にかけて徐々に凝固していく
■シャボン玉を凍らせると表面上に無数の結晶が生じ、全体がスノードームのようになる
■これは液体の表面張力における場所的な力差によって生じる「マランゴニ効果」が原因である
なんと美しい眺め…。
上の画像は水でなく、シャボン玉が凍ってスノードームになる様子を捉えたものだ。
液体が固まるときは通常、一番温度の低いスポットから凝固し、徐々に周囲に広がっていく。
ところがシャボン玉の場合は、無数の結晶が泡の表面上に散らばっていき、凍り方もランダムで、しかも結晶はコロコロと不思議な動きをするのである。
この不思議な現象を解明するため、米バージニア工科大学の研究チームがラボ内でシャボン玉のスノードームを再現。その結果、凍っていくシャボン玉では「マランゴニ効果」という現象が起きていることが明らかになった。
研究の詳細は、6月18日付けで「Nature」に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10021-6
シャボン玉に起こる「マランゴニ効果」とは
今回の研究は、YouTube上にアップされている数々のシャボン玉スノードームにインスパイアされて始まったという。
研究チームはフリーザーを使い、シャボン玉をマイナス20度で凍らせて、その様子を至近距離のハイスピードカメラで撮影した。
詳細な観察の結果、シャボン玉の表面に浮かぶ結晶運動の正体はマランゴニ効果が原因と判明した。
マランゴニ効果は、液体に発生する表面張力との関係で起こる。この表面張力も分かっているようで意外と奥が深い。
水などの液体は分子が自由に動ける状態にある。分子間では互いに引き合う「分子間力」が働いているが、全体としては力を打ち消しあってプラマイ0になっている。なので、コップの中の水は比較的安定した状態にあるのだ。
ただ分子間力は水中だけでなく水と大気の間でも働く。しかし分子の密度は圧倒的に水中の方が高いため、コップ表面の水は内側に引き込まれるようになる。これを表面張力と呼ぶ。
例えばこのような現象だ。
そしてこの表面張力の場所的な力差によって生じる液体の自由移動が、マランゴニ効果なのである。
マランゴニ効果は流体が表面張力の低い領域から高い領域へ、あるいは温度の高いところから低いところに移動する必要があるときに生じる。
ではこれを実際のシャボン玉で見てみよう。
キラキラだ。
表面が凍り始めると、まだ液体状になっている部分が移動し始め、結晶部分が動き出すのが確認できる。一方で結晶は局所的な凝固を促すことで、ドーム全体の凍化を速める働きもしているのだ。
こうして見事なスノードームの完成というわけである。
ひと夏の間これを覚えておいて、次の冬に試してみるのもいいかもしれない。