
Point
■Puccinia triticinaという病原菌に感染した小麦では、葉に付着した水滴が合体する際に弾かれて、それによって病原菌の胞子が運ばれる
■Puccinia triticinaは、赤さび病という深刻な病気を小麦にもたらす
■撥水性が高い物体表面で水滴同士が合体する際に、解き放たれた表面張力が運動エネルギーに変換されることで、水滴が弾け飛ぶ
最近の研究で、小麦が「くしゃみ」をすることが明らかになった。といっても、もちろん文字どおりのくしゃみではない。
Puccinia triticinaという病原菌に感染した小麦では、葉に付着した水滴が合体する際に弾かれて、それによって病原菌の胞子を運ぶことが分かったのだ。
論文は、「Journal of the Royal Society Interface」に掲載されている。
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsif.2019.0243
撥水性が高い物体表面で生じる「表面張力のパチンコ」現象
Puccinia triticinaは、赤さび病という深刻な病気を小麦にもたらす厄介者だ。この菌が付着した小麦の葉には、さび色をした盛り上がった斑点ができ、その中から胞子が飛散する。赤さび病の被害は、穂の数や粒の重量の著しい低下を招く。

葉に付いた水滴が弾け飛ぶ現象は、健康な植物にも見られる。水滴同士が合体する際に解き放たれた表面張力が、運動エネルギーに変換されることで、水滴が弾け飛ぶのだ。
この「表面張力のパチンコ」とも呼ぶべきこの現象は、麦のような特定の植物の葉など、撥水性が極めて高い時に生まれる。
その瞬間を捉えた動画がこちら。
まるで意思を持っているかのようにポロンポロンと弾け飛ぶ水の粒の美しさに、思わず見とれてしまう。
まさに自然の為せる芸術だが、この水滴が病原菌を含んでいるとしたら…? 確かにれっきとした「くしゃみ」である。