モチーフは現地に生息していない鳥だった
数ある地上絵の中で、最も多く描かれているのが鳥類だ。
研究チームは計16点存在する鳥類の絵を、くちばしや足指、尾羽など鳥類学的な形態論に基づいた分析を行なった。
その結果、16点の内3点の種類特定に成功し、2点はペリカン類、1点がカギハシハチドリ類であることが確認された。
ところがこれらの鳥は、ナスカの現地周辺にはまったく生息していない。ペリカン類はナスカの砂漠台地からおよそ50km離れた海岸部に、カギハシハチドリ類はアンデス山脈の北側にあるアマゾニア地域に生息している。
いずれもナスカ現地からはかけ離れた場所だ。
研究主任の江田真毅准教授は「現地に生息するアンデスコンドルやキバシヒメバト,フタオハチドリなどではなく、外来の鳥類をモチーフにした背景には何らかの目的があると考えられる」と話している。
また先行研究により「コンドル」や「フラミンゴ」と特定されていた地上絵は、今回の調査で、形態的に一致が見られず間違った分類であることも判明したようだ。
ナスカ周辺の民話には、「海鳥が海から運んだ水を山に落とし、水が川を流れてナスカ台地に至る」というものがある。北大総合博物館の江田真毅准教授は「海鳥のペリカンを描いたのは、雨乞いが目的だった可能性があるのではないか」と推測している。
果たして当時の人々は、なぜ遠い場所の鳥を描いたのだろうか。民話や神話に由来したものなのか、昔は生息していたのか、誰かがナスカに鳥を持ってきたのか…謎は深まるばかりだ。