Point
■低重力環境が凍結精子の生存能力に損傷を与えないことが判明
■ヒトの精子を宇宙空間へ安全に運び出し、精子バンクを地球外に設置できる可能性が上昇
■地球から多様な精子を持ち込むことができれば、火星の遺伝子プールは大幅に拡張される
2033年までに建設が予定されている火星植民地。
人類が未開の地に根付いて生きていくためには、生殖によって子孫を増やすことが不可欠だが、その際に問題になるのが、低重力環境下に長時間さらされた場合の、ヒトの細胞への影響だ。
このほど、低重力環境が凍結精子の生存能力に損傷を与えないことが、ある予備調査で示された。研究を行ったのは、バルセロナの産婦人科病院Dexeus Women’s Healthの研究チームだ。
曲芸飛行で宇宙空間の低重力を再現
研究者チームは、精子サンプル10点を、曲芸飛行訓練用の小型飛行機に搭載し、一定の高度から8秒間一気に急降下することで宇宙空間の低重力環境を再現した。
飛行機は、再び放射線状を描くようにして元の高度に戻り、この動きを、計20回繰り返したという。その時の精子の気持ちを想像すると少し複雑な気分だ。
実験の結果、低重力環境にさらされた後の精子の生存能力は、実験前の精子の生存能力と同程度に高いことが明らかになった。