Point
■音楽を継続的に学んだ生徒が、そうでない生徒と比べて数学や科学などの教科で好成績を収めていたことが分かった
■「ボーカル」よりも「楽器」を学んだ生徒のほうが成績がよく、楽器に必要とされるスキルが多方面に活かされている可能性がある
■この研究により、予算が削られがちである学校における「音楽」の地位が向上することが期待される
楽器が弾けるとモテるだけではないようだ。
音楽をまったく聴かない人に巡り合う機会はめったにない。それほどまでに私たちの生活に欠かせないものである音楽には、実は驚くべき力があるのかもしれない。
新たな研究により、音楽の授業を選択していた生徒の成績が、そうでない生徒を上回っていたことが明らかとなった。もちろんこれは、音楽の成績の話ではない。数学や科学など、一見まったく音楽と関係のない教科の成績が相対的に優れていたのだ。
研究は「Journal of Educational Psychology」に掲載されている。
Participation and Academic Achievement
https://www.apa.org/pubs/journals/releases/edu-edu0000376.pdf
計り知れない音楽のパワー
学校の経営者は音楽コースへの予算を削りがちだ。それは、音楽に没頭する生徒は他の教科をおろそかにしてしまうといった、一般的な考え方に基づいての判断であるといえよう。
この研究は、そうした常識を覆す結果を示すものだ。
幼い頃から継続的に音楽を習い続けてきた生徒たちは、社会経済的な背景や出自、あるいは性別といったファクターを考慮に入れても、音楽を学んでいない生徒と比べて他の教科で好成績を収めていたのだ。
研究チームは、ブリティッシュコロンビア州で、2012-2015年の間に公立学校のGrade12(日本の高校3年生に当たる)を卒業した生徒全員のデータを調査した。
生徒の総数は112,000人以上にものぼり、彼らはみな、少なくとも1つの標準化された数学、科学、英語のテストを受験していた。また、研究者らは彼らの性別、出自などの人口統計上のデータも参考にしており、「音楽を選択した生徒」としては、少なくとも1回、音楽の定期的なカリキュラムを組んだ生徒を指すと定義した。