生物以外の可能性も
ところが、喜ぶのはまだ早い。メタンガスの発生原因は微生物以外にも十分に考えられる。
NASAゴダード宇宙飛行センターの火星研究者ポール・マハフィー氏は「今回の観測数値から推測すると、メタンガスが生物学的な原因で発生しているとはまだ断言できない」と話す。
メタンガスを所有する太陽系惑星は他にもあり、その多くが生物以外の発生源に由来しているそうだ。
例えば、木星や土星のメタンガスは化学物質の相互作用により生じている。冥王星には凍った状態のメタンが存在し、土星の衛星タイタンには液体状になっているメタンの湖があるという。これらはすべて生物由来でないことが分かっている。
このように化学物質が原因で発生するメタンガスというのは太陽系においてまったく珍しくないのだ。
その中で唯一、生物由来で発生しているメタンガスが存在するのは地球である。2011年に調査された地球上のメタンガス平均値は1800ppbに達しており、その90〜95%が生きている生物やその死骸から放出されている。
火星も今後の調査により、メタン発生原因が微生物であると特定されれば、地球以外に生命が存在する2番目の太陽系惑星となることが期待される。
メタンガスの数値を考えると、微生物の数は極めて少ないのかもしれない。いずれにせよ「いるのか、いないのか」。それが問題なのだ。