
Point
■ノルウェー極地研究所はメスのホッキョクキツネにGPSを搭載して移動ルートを追跡
■その結果、ノルウェーからカナダまでの3506kmをわずか76日間で走破しているという驚異のデータが判明
■移動距離は平均して46km/日で、1日に155kmを走破している日もあった
母を訪ねて三千里なマルコもびっくりなニュースだ。
ノルウェー極地研究所のチームは昨年の3月末、野生のホッキョクキツネにGPSを装着して放し、走行ルートを調査した。
すると驚くべきことに、キツネはノルウェーのスヴァールバル諸島からカナダ北部までの3506kmを、わずか76日で走破していたことが判明したのだ。
これまでにも数頭のキツネの移動範囲を同じ手法で調査しているが、今回ほどの移動距離と驚異的なスピードを見せたキツネは初めてであるという。
Published this morning: “Arctic fox dispersal from Svalbard to Canada: one female’s long run across sea ice” https://t.co/vUvu4NbPEj This is the first satellite tracking of natal dispersal by an Arctic fox between continents. Authors: Eva Fuglei and Arnaud Tarroux pic.twitter.com/gowSov0OBA
— Polar Research (@PolarResearch) June 25, 2019
報告の詳細は、6月24日付けで「Polar Research」上に掲載されている。
https://polarresearch.net/index.php/polar/article/view/3512
1日155km移動した日も!
追跡調査を行なったキツネはメスのホッキョク種で、年齢は野生に放した時点でまだ1歳未満だった。
ホッキョクキツネは一般的に、食料が豊富に見つかる夏から探すのが困難になる冬にかけて移動を開始する。しかし今回の子ギツネほどの移動距離とスピードは前例がない。キツネの中でも飛び抜けたランナーのようだ。
出発からわずか21日後にはグリーンランドに到達しており、走行距離は1512kmだった(1日72km!)。それからまだ移動を再開し、カナダに到着したのは出発からわずか76日後。
総移動距離は3506kmなので、単純計算で1日46kmを走破していることになる。GPSデータを詳しく分析してみると、1日に155km移動していた日もあったそうだ。ケニアのマラソンランナーも青ざめる数値である。

研究チームのEva Fuglei氏は、「データの結果に我が目を疑った」と話している。
氏はノルウェーのNRK放送に対して、「最初はキツネが途中で死んでしまって、船で運ばれたのかと思っていましたが、その地域に船はいなかったんです。真実を知ったときは唖然としましたね」と話している。
また移動ルートを動画グラフにしたところ、キツネが道中で2度休憩を挟んでいることも分かった。下の動画がキツネの移動ルートだ。
これは北極の厳しい猛吹雪から身を守るための行動か、あるいはその場所に留まるだけの十分な食料源を見つけたかのどちらかだと考えられる。
残念ながら現在、子ギツネがどこにいるのかはすでに分からなくなっている。GPSに搭載したデータ送信機が、今年の2月に入って作動停止したようなのだ。
しかしこれほどたくましく強靭なキツネなら、今頃アメリカ大陸も横断しちゃってるかも。