宇宙初期に生まれた恒星の死の様子
この星の「極端に重い」「短命」「金属に乏しい」という条件は、すべて初期宇宙で誕生したとされる種族Ⅱの恒星の特徴と一致します。
種族Ⅱとは、宇宙誕生後の第2世代に当たる初期の恒星のことです。(星の種族や年齢についてはこちらの記事を参照)
ただこの星は、地球から約10億光年離れた金属に乏しい矮小銀河から見つかっており、本当に第2世代の星である可能性は低いでしょう。
金属が乏しい矮小銀河は、重金属が生まれる前の初期宇宙に非常に酷似しています。そうした環境から、初期宇宙の恒星と同じ様な星が生まれ、それが珍しい超新星を起こしたのだと考えらるのです。
また、この星が見つかった場所は、そんな矮小銀河の中心から5万4千光年離れた辺境でした。これも奇妙な点で、星や星間物質の密集していない銀河の辺境に、これだけ巨大な天体が存在した理由は未だに不明です。
しかし、この事実は観測上、非常に重要な価値があります。
通常超新星を起こす天体は、星の密集した銀河中心部の眩しい領域で見つかるため、数ヶ月ほどで輝きを失ってしまった後は、もう痕跡を追うことができなくなります。
ところが、今回発見された巨大な超新星は、なぜか銀河の辺境に存在していたために、発生から数年が経過したあとでもその残光を観測し続けることができるのです。
この超新星は、宇宙初期の星がどの様な生涯を送り、死んでいったかを知るための貴重な観測例なのです。
「対不安定型超新星」も理論上の現象で、明確に観測されたのはこれが初となります。過去にも候補となる観測は行われていましたが、先に語った通り数ヶ月ほどしか観測できないため、詳細な様子を知ることができません。
天文学者たちは、「この天体からさらに多くの事実を見つけ出せるだろう」と、興奮気味に語っているそうですよ。