Point
■ヨーロッパは風況が良く平坦な地形が多いため、風力発電に適している
■風力発電所が設置可能な場所を分析したところ、西ヨーロッパの大部分が風力発電に適していると判明
■もし潜在的な風力発電所がすべて実現すれば、世界中で消費されるエネルギー量を賄う量が生産可能となる
欧州に良き風立ちぬ。
サセックス大学およびオーフス大学の研究によると、ヨーロッパには、現在の陸上風力発電で生産している量の100倍以上のエネルギーを作り出せる潜在性があることが分かりました。
もともとヨーロッパ地方は、年間の平均風速が9〜10m/s前後と非常に風況に優れた土地です(日本の平均風速は6〜7m/s)。
もしヨーロッパの潜在的な風力発電所がすべて実現されれば、2050年までに全世界の電力消費量を賄うのに十分なエネルギーを作り出せる可能性があるとのこと。
研究の詳細は「ScienceDirect」上に掲載されました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301421519304343
ヨーロッパの風が世界のエネルギーを賄う?
研究チームが「地理情報システム(GIS)」を用いた空間分析を行ない、ヨーロッパの陸上風力発電に適した場所の46%の特定に成功しました。
その結果、トルコやロシア、ノルウェー、西ヨーロッパの大部分が、風速が良好で平坦な地形が多いことから陸上風力発電に適していると判明。
想定では1100万基以上の風力原動機を各地に設置することで、497EJ(エクサジュール)の発電を行うことができるとのこと。これは2050年までに予想されている全世界のエネルギー需用量の、およそ430EJを十分に満たす数値です。
オーフス大学エネルギー技術センターのピーター・エネボルドセン助教授は「断続的な自然の風が安定した発電を妨げるという批判は納得できます。しかし今後10数年における風力原動機の技術発展を考慮しなくとも、陸用風力発電は最も安価で地球に優しい再生可能エネルギー源となるでしょう」と話しています。
また同研究チームのベンジャミン・ソヴァクール氏によると「今回の研究は可能な進歩のための青写真ではなく、政策立案者に向けてどれだけ多くのことができるかを示唆するための具体的な導きとなる」と指摘しています。
設置可能なすべての場所に風力原動機を建造すべきかどうかはまだ判断できませんが、気候変動による危機を避けるには、より多くの風力発電所を動力化する必要があるでしょう。
ヨーロッパの風が原子力発電に取って代わる日が来るのでしょうか。