Point
■海底に沈む天然資源メタンハイドレートの利用については、世界中で研究が進められているが、現在のところ実用化に漕ぎ着けている方法はない
■二酸化炭素とメタンを置換して天然ガスを取り出しつつ、温室効果ガスを海底深くに封印してしまおうという一石二鳥な方法が研究されているが、シミュレーション結果は思わしくなかった
■今回の発表では、このガスの置換を窒素を絡めて二段階の工程で行うことで上手くいくことを示している
日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵地帯といわれている。これが上手く取り出せれば、天然資源に乏しい日本が一躍資源国となれる可能性があるのだ。
もうトランプにでかい顔はさせない!
そんなわけで、何かとよく話題に上るメタンハイドレートだが、現在のところ、その上手く取り出す方法というものは確立されていない。
これは海外も同様で、メタンハイドレートの利用は世界中で今ホットな研究テーマになっている。
一方、天然ガスなどの利用は地球温暖化を推し進める要因になっており、世界中で問題視されている。
天然資源を手に入れつつ、地球温暖化も解決するような上手い方法はないだろうか?
そんな2つの問題を一挙に解決してしまう欲張りな研究が存在する。
それが、海底のガスハイドレートのメタンと二酸化炭素を置換して、天然ガスを取り出すと同時に、温室効果ガスの二酸化炭素を海底深くに封印してしまおうというものだ。
今回の研究はテキサス大学オースティン校の研究者により発表され、アメリカ地球物理学連合の学術雑誌 『Water Resources Research』に掲載されている。
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1029/2018WR023414
氷のガス? メタンハイドレートとは?
メタンハイドレートという用語自体は、多くの人が聞き慣れていると思われる。
しかし、メタンハイドレートとはそもそも何なのだろうか?
日本ではメタンハイドレートだけが有名だが、専門家の間ではガスハイドレートという呼び方が一般的である。
共通するのは「ハイドレート」という単語だ。
ハイドレートというのは、水分子が籠の様になって、中にガスの分子(ゲスト分子と呼ばれる)が捕らわれている状態のものを指している。
これはメタンなどが水分子と化学的に結びついているわけではなく、水分子に囲まれて捕らわれているだけの状態なのが特徴だ。メタンハイドレートは常圧に戻すと体積の170倍近い天然ガスを取り出すことができる。
この水分子の籠は、氷とは構造が異なっているため、個体になっているが氷なわけではない。
こうした特殊な状態は、低温高圧の状態で自然と形成される。例えば常圧の場合にハイドレートを作ろうとすると、マイナス80℃以下の低温にしなければならない。しかしこれが50気圧の高圧になると、6℃の温度でも形成できるようになるのだ。
50気圧というのは、だいたい水深500メートル以下の環境だ。陸地でも深い地層の中なら高い圧力を得られるが、地面の深い場所では高温の地熱が問題になる。深海は水温が低く海底では4℃ほどまで低くなる。
そんなわけでメタンハイドレートは、海底という環境でのみ見つかる天然資源なのだ。