Point
■小惑星「6478 Gault」は、二股の尾を持っているが、彗星以外で尾を作る天体は珍しく、尾の発生原理は彗星と全く異なっていると考えられている
■精密な分光観測の結果、この小惑星が放つ近赤外線は赤から青に変色していることも明らかになった
■短時間で変色する現象は初めてのことで、これらは全て小惑星が高速スピンすることで、表層物質を消し飛ばしていることが原因と考えられている
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した小惑星「6478 Gault」には、2つの不思議な特徴があることが分かりました。
1つは二股に別れた尾を持っていること。天体が引く尾は、基本彗星のみに見られる特徴で、小惑星に尾ができることはめったにありません。これは彗星とは異なる原理で発生していると考えられています。
そしてもう一つの不思議な特徴が、高精度分光観測の結果、この小惑星が赤から青へと変色していることです。短時間にこうした劇的な変化を見せるのは、天文学者の間でも初めてのことだと驚かれています。
これらの不思議な特徴は、どちらも小惑星が高速で回転していることが原因と考えられています。
この研究は、マサチューセッツ工科大学、地球大気惑星科学部(EAPS)の研究者らによって発表され、8月30日付けで天文学術誌「Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab32ee
謎多き小惑星
小惑星「6478 Gault」は1988年にシューメーカー夫妻によって発見されました。シューメーカー夫妻は、木星に衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星の発見でも有名な天文学者です。
この小惑星の幅は約4kmで平均的なサイズで、太陽から3億4400万kmほどの小惑星帯の内側を回っていました。この小惑星が、昨年12月の観測で二股に別れた尾を作っていることが発見されたのです。
二股の尾は長い尾と短い尾に分かれていて、長い方は約80万km、短い方はその4分の1程度の長さだと推定されています。これは何千万kgという塵の放出があることを意味しています。
彗星はよく尾を引く姿を目撃されますが、小惑星がこのように大量の物質を放出して尾を引くのは非常に珍しい現象です。
彗星は氷と塵が固まってできた雪玉のような天体です。冷たい太陽系の果てからやってきた彗星は、太陽に近づいて行くことで、表面の氷が気化し、輝く塵の放射をするのです。
一方小惑星は岩石の固まりです。そのため、彗星と小惑星では、尾を引く原理がまったく異なるはずです。
この謎に挑むべく、研究チームは今年の3月にNASAの赤外線望遠鏡(IRTF)で観測を行い、高精度の分光器を使って、小惑星の組成分析を行いました。
その結果、今回の「6478 Gault」のその主成分は珪酸塩と判明してました。これは乾燥した岩のような物質です。そのためやはり彗星とは異なるメカニズムで、ダストテールを生成している可能性が高くなったのです。
さらに、この観測では小惑星の新たな事実が判明しました。それは、この小惑星が、近赤外線で赤から青に変色しているということです。「短時間でこのような劇的な変化を確認したのは初めてのことだ」と共著者のDeMeo氏は驚きの声を上げています。