Point
■中国の月面探査機「玉兎(ぎょくと)2号」が月の裏側で奇妙な発見をしたという報告が発表された
■それは、最近できたと思われる小さなクレーターの底から見つけたもので、「不思議な輝きを放つゲル」だと言う
■分析結果はまだ出ていないが、乾燥した月面でゼリー状の物質は考えにくいため、火山の熱で形成されたガラスの可能性が指摘されている
2018年12月に打ち上げられた月探査機「嫦娥(じょうが)4号」。そこに搭載された月面探査機「玉兎」は、中国語で月の兎のことを意味する言葉です。
この「玉兎2号」は、史上初となる月の裏側の探査を行っています。そんな人類未踏の月裏側を調査中に、「玉兎2号」が奇妙な物体を発見したと海外メディア「Independent」などが報告しています。
それは比較的新しいクレーターの底から見つけたもので、中国宇宙機関の表現では「異常な色」を持った「ゲル状」の物質だといいます。
中国の科学者はまだ詳細な内容や分析結果を公開していませんが、外部の研究者は「隕石が月へ衝突した際に作り出した融解ガラス」だろうと推測しています。
一体彼らは何を発見したのでしょうか?
中国の月面調査プロジェクト
月の裏側にある、最も古く巨大なクレーター「南極エイトケン盆地」。「嫦娥4号計画」の目的は、この「南極エイトケン盆地」へ降り立ち、月のマントル由来の物質を調査することで、月の内部構造や歴史に関する新しい知見を得ることです。
今回報告された調査地点は、この南極エイトケン盆地の中にできた比較的新しい「VonKármán(フォン・カルマン)」クレーターの辺りだといいます。
「嫦娥4号」から発信した月面探査機「玉兎2号」は、このクレーターの底を調査しています。太陽からの強い放射を保護するために、調査は休み休み行っているとのこと。今回の発見も、探査機の「仮眠」のために電源を切る準備中に、メインカメラの映像をチェックしていたチームメンバーが発見しました。
謎の物質が発見されたのは、新しい小さなクレーターでした。その底に、周囲の月面や堆積しているレゴリスとは異なる色と光沢を持ったゲル状の素材が発見されたのです。
調査チームは、「玉兎2号」にこの謎の素材の可視光、及び近赤外線分光計での検査を実行させ、材料の散乱や反射から構造調査を行ったそうです。
しかし現在のところ、このミッションに参加する科学者たちからこの素材の性質や、それが何であったのかという具体的な情報は提供されていません。ただ、「ゲル状」で「異常な色」をしていたという報告のみに留まっています。
外部の研究者たちは、乾燥した月面上に「ゲル状」の物質があるとは考えにくいため、それは隕石の衝突によって生成された、溶解したガラスのようなものだろうと推測しています。
実際のところ、月面上で予想に反して特殊な色をした物質が見つかることは、それほど驚くべきことではないといいます。
アポロ17号の調査では、1972年に着陸地点付近でオレンジ色をした特殊な土壌を発見しました。これはその後の調査で、約36億年前の火山爆発により作られた土壌と結論付けられています。
このように、現在は静寂を保っている月面でも激しく活動していた時期があり、そうした痕跡は月面上から数多く見つかるようです。
今回の中国の探査機による発見が、まさか本当にゲル状の物質で、隕石が運んできた異星の特殊素材…ということはさすがに無いとは思いますが、新しい発見にはワクワクさせられますね。