Point
■自分よりも立場が上だと思う相手と目標を共有した場合、人は目標達成のためにより多くの力を注ぎ、目標を達成しやすい
■ただし、誰かを感心させようとするあまり過度な不安が生じると、反対にパフォーマンスの妨げになる恐れも
■相手の意見を本人が気に掛けていることこそが、目標達成の鍵である
目標を達成したければ、それを誰かと共有しましょう。ただし、「どんな相手と共有するか」が肝心です。
オハイオ州立大学フィッシャー・カレッジ・オブ・ビジネスのハワード・クライン氏らによる最近の研究で、目標を自分よりも立場が上だと思う相手に伝えた時の方が、人は目標達成のためにより多くの力を注ぎ、結果的に目標を達成しやすいことが明らかになりました。
論文は「Journal of Applied Psychology」に掲載されています。
https://psycnet.apa.org/record/2019-45131-001
同一人物の変装から見えた真実
クライン氏らは最初の調査で、働いている成人が仕事上の目標をしばしば誰かと共有し、それが本人よりも立場が高い相手だった場合、より熱心に目標達成に取り組むことを示しました。
また、別の調査では、大学生171名をコンピュータの前に座らせ、画面上でスライドを50枚目まで移動させる作業を、一定の時間内にできるだけ多く行うよう指示するというものでした。1回目のタスクが終わると、被験者は再び同じタスクに取り組みましたが、2回目は事前に目標回数を書き出す必要があります。
その後、実験のアシスタントが回ってきて各自の目標をチェックすることが、被験者に伝えられました。アシスタントは常に同一人物でしたが、登場の仕方が異なります。
一部の被験者の前で、アシスタントはスーツを身に着け、自分がビジネススクールの博士課程の学生で、その日の研究トピックの専門家であることを伝えました。それは、大学生である被験者の誰もが自分より立場が上だと考える人物でした。
別の被験者の前では、アシスタントはガラリと変わってカジュアルな身なりをして、自分が地元の短大の学生で、ビジネススクールのアルバイトとしてその日そこに来ていることを伝えました。この場合、被験者はアシスタントの立場を自分より低いと見なしました。
残りの被験者は、目標をアシスタントと共有しませんでした。
実験の結果、立場が上のアシスタントと目標を共有した被験者は、立場が下のアシスタントと目標を共有した被験者よりも、自分で設定した目標の達成により熱心に取り組んだと報告することが分かりました。実際、タスクにおける前者の成績は他の被験者を上回り、後者の成績は目標を誰にも伝えなかった被験者を下回ったのです。