
Point
■脳卒中により言語に関わる左脳を損傷した患者に対して、色認識に関するテストが行われた
■患者は色を「赤」「青」などの名前で認識する能力を失っていたが、同じ「青」なら、階調が異なっていても同じ色として分類可能
■「白」「黒」「灰色」という色に付いては命名能力を維持しており、グレイスケールの識別は他の色と異なる方法で処理されている可能性がある
私はこの色を「赤」と呼んでいるけれど、他の人の見ている「赤」と同じ色なんだろうか? 呼び方が同じだから齟齬が無いだけで、実は全然違う色の世界を見ているんじゃないだろうか?
このような疑問は、誰もが一度は抱くと思います。
一体、私達はどのように色に名前を付けて分類しているのでしょうか? そのとき脳内ではどのようなプロセスが働いているのでしょうか?
今回この問題について、脳の言語システムに損傷を負った脳卒中患者から、新たな知見が見出されたという報告が発表されました。
それによると、言語で色名を認識できなくても、色調の変化や、同種の色の理解は可能なことや、「白」「黒」といった無彩色については、言語システムが損傷を負っていても問題なく色の名前を指摘できるというのです。
この研究は、フランス、ソルボンヌ大学の研究者を筆頭としたチームより発表され、2019年9月3日に生命科学分野の査読付き科学雑誌「Cell Reports」に掲載されています。
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(19)31026-5#%20
色とはなんなのか?

私達が「色」と呼ぶものは、連続した階調スペクトルの1点に過ぎません。それは光の波長の変化から生まれるものであり、それぞれの色の間に明確な境界線は存在しないのです。
また色には、それぞれの色名に関連した概念的なカテゴリが存在し、同系統の色というグループ化がなされます。
この曖昧で複雑な色の認識と分類のプロセスがどのように脳内で行われているかは、神経医学や神経心理学の分野でもまだ完全には明らかにされていない問題です。
しかし多くの科学者たちは、こうした色の認識や分類に色の名前という言語システムが大きく関与しているだろうと考えており、実際それを裏付ける研究報告も存在しています。
色の認識には、視覚野から言語野を通じてなんらかの「トップダウン」入力が起こっており、その結果、私達は連続したスペクトルの1点でしかない特定の色について、それが赤のバリエーション(例えば、深紅、朱色、ピンク)であれば、赤色であると認識できるのです。
ところがこうした理解の仕方に、疑問を投げかける症例が見つかりました。

























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