Point
■通称「タビーの星」は非常にランダムかつ最大22%の減光を起こす謎多き星
■この減光については原因が分からず、宇宙人の構造物が星の光を遮っているというトンデモ説まで登場している
■この原因が、現在はまだ未発見の天体「プルーネット」の影響ではないかとする説が登場した、事実ならば初のプルーネット発見に繋がる可能性がある
はくちょう座の方角、1480光年ほどの場所に浮かぶ太陽より少し大きな恒星「KIC 8462852」。19世紀末から知られた何の変哲もない星…と思われていたのですが、2015年になってある特殊な性質を持つことが発見されました。
それは「KIC 8462852」が2011年から2013年の間に極めて不規則に減光しているということで、極めて異例の現象です。
そのためこの星は、不規則な減光について最初に指摘したTabetha Boyajian氏の名にちなんで「タビーの星」と呼ばれています。
「タビーの星」はその後、ハーバード大学に保管されていた19世紀末からの写真乾板の記録調査により、過去最大で22%もの減光があったと確認されました。
原因は現在も特定されておらず、あまりに減光の程度が大きく不規則であるために、エイリアンの建造物に遮られているんだと主張する人まで現れる始末です。
そんな謎多きタビーの星の減光について、これが「プルーネット」と呼ばれる、現在はまだ仮説上の存在に過ぎない天体の影響ではないかと指摘する論文が発表されました。
この論文は、コロンビア大学の天体物理学者より発表され、9月5日付けで天文学を扱う査読付き学術雑誌「英国王立天文学会月報」に掲載されています。
https://doi.org/10.1093/mnras/stz2464
不規則な変光星 タビーの星
宇宙には規則的に明るさを変化させる変光星というものが存在します。
これは連星が食を起こすことによって明かりを遮られたり、星の内圧が変化することで核融合が活発・不活発になったりすることで起こり、通常は非常に規則的に明るさを変化させます。
ところがタビーの星の明るさの変化は、まったくランダムなのです。減光の程度もめちゃくちゃで、過去には22%も減光したこともありますが、昨年の減光は5%程度でした。
不規則な減光は、彗星や小惑星の影響が予測されていますが、その場合問題になるのが、大きすぎる光の吸収量です。木星のようなサイズの惑星が恒星と地球の間を遮ったと仮定しても、その減光の割合は1%程度にしかなりません。
これを彗星の放出する塵が原因とした場合、異常な量の彗星が大量に星の周りを回っていると仮定しないと説明がつかない状況になるのです。
また、減光の発生頻度や、減光の発生期間も問題になります。不規則といってもかなりの頻度で減光は発生しており、また非常に長期間減光が発生していた時期もあります。そうなると単純に彗星に原因を求めるのは難しいでしょう。
若い恒星の場合、惑星になる前の塵が降着円盤となって取り巻いている可能性が考えられますが、このタビーの星はその可能性を考慮するには年を取りすぎています。
天文学者たちは、タビーの星が起こす不規則な減光を支持するモデルは、現状存在していないというのが一致した見解です。