
Point
■全身麻痺患者が、思考内容を伝えることで歩くことができる「外骨格スーツ」が開発される
■「歩く」という脳波をコンピューターが読み取り、それを指令として変換し、スーツに送信する仕組み
全身麻痺を患う人が再び歩けるようになる「外骨格スーツ」が開発されました。
これは脳にインプラントしたセンサーを通して脳波を読み取ることで、思考した命令をスーツに送信することができるというもの。
スーツ開発に参加した、四肢の麻痺を患うチボーさん(30)は、スーツを装着した感想について「月に初めて降り立った人類になった気分」と形容しています。

スーツには、まだ多くの改善点が山積みとなっていますが、全身麻痺医療において画期的な挑戦であるのは確かです。
開発は、フランス・グルノーブル大学、メディカル企業Cinatechなどが参加しています。
研究の詳細は、10月3日付けで「The Lancet Neurology」に掲載されました。
https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(19)30321-7/fulltext
思考内容をスーツに送信
チボーさんは、フランス・リヨン出身の30歳男性で、4年前にクラブのバルコニーから15m下に落下し、脊髄を損傷しました。その後、肩から下がすべて動かなくなり、2年を病院で過ごすことになります。
それから2017年に、グルノーブル大学が始めた「外骨格スーツ」の開発実験に参加することになりました。
スーツは装着者の脳波を読み取って動く仕組みであるため、チボーさんは、まず体の動きを司る脳領域の表面に2つのセンサーをインプラントする手術を受けました。

各センサーに付いている64個の電極が脳波を読んで、その内容を外部コンピューターに送信します。その後、受信した内容をソフトウェアが読み込んで、スーツを動かす指令に書き換えるのです。
例えば、チボーさんが「歩く」と考えると、コンピューターがスーツの足を動かす指令となります。
