Point
■火星のゲイルクレーターを調査するキュリオシティが、塩を含むひび割れた岩石の層を発見
■この塩は、岩石の鉱物塩が水に溶けだして、堆積物と混ざりながら何度も乾燥と溶解を繰り返した結果と考えられる
■火星は明らかに地球と似た環境の時期があり、南米アルティプラノの塩原はかつての火星の景観によく似ている可能性がある
本当なら想像もつかないような35億年前の火星の姿。しかし昨今、探査機キュリオシティの調査によって、徐々にイメージできるようになってきています。火星にかつて水が存在していたことは、今では疑いようのない事実のようです。
そして現在、キュリオシティが調査している幅150キロメートルの古い盆地「ゲイルクレーター」の地面では、かつて点在していたと思われるオアシスの痕跡が発見されています。
ここから見つかる堆積層を調べると、このクレーターでは単純に水のある状態から乾燥していったわけではなく、乾湿の気候を数百万年に渡って何度も繰り返していた可能性があるのです。
この状況は、南アメリカの高地にあるアルティプラノの塩原とよく似ているといいます。両者の比較から、かつての火星の姿がわかるかもしれません。
この研究は、NASAのキュリオシティチームの科学者たちによって発表され、地球科学と関連分野に関する学術雑誌『Nature Geoscience』に10月7日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41561-019-0458-8
ゲイルクレーターのオアシス
探査機キュリオシティが調査を行っている火星のゲイルクレーターは、古代の隕石衝突後と考えられています。形成されたのはおそらく35億年以上前で、長く湖となっていた可能性が高いクレーターです。
このゲイルクレーターの中央には5500メートルの高さを持つ切り立った丘、シャープ山(NASAでの呼称、公式にはアイオリス山)があり、キュリオシティは2014年からこの山を調査しています。
山の麓でキュリオシティは淡水湖が長く存在していた痕跡を発見していますが、この山の斜面ではまた異なった痕跡を発見しています。
それはひび割れのような網目模様に隆起した岩盤です。
こうした岩の形状は、乾湿の繰り返しで形成されたと考えられています。ゲイルクレーターは、穴の壁を伝って何度も水が流れ込んでは、乾燥するという状態を繰り返されており、クレーターの底には浅い塩水の池がいくつも誕生していたと解釈できるのです。
ここには鉱物塩の溶け出した塩も見つかっています。通常塩を含んだ湖が干上がった場合、そこには純粋な塩の結晶の山が残ります。しかし、ここで見つかった塩は堆積物と混ざり合っており、これは湿った環境で塩水が濃縮されながら結晶化していった様子が示唆されているのです。
こうしてクレーターの底に溜まった堆積物は、風に運ばれてシャープ山の切り立った側面を作り上げていきます。それを、キュリオシティが現在観測しているのでしょう。
これらの証拠は、ゲイルクレーターの水の歴史における、これまでとは異なった新たな時代の様子を知る手がかりかも知れません。