Point
■寿命は細胞分裂の回数で決まっており、分裂のスピードが落ちることを「老化」、分裂回数が尽きると「死」を意味する
■分裂回数を決める「テロメア」の長さを2倍にしたマウスは、通常より12%も寿命が延びた
「人間五十年…」と歌われたのも今は昔。現代人の寿命は著しく伸び、特に日本人の平均寿命は84歳を超えて最も長寿の国の一つとなっています。
それでも「不老不死」という人類古来の夢には遠く及びませんが、現代科学は確実に一歩ずつ、その夢へと近づいています。
今回、スペイン国際ガン研究所(Spanish National Cancer Research Center)により、遺伝子操作をまったく行わず、マウスの寿命を12%も延ばす新たな方法が発見されたのです。
研究の詳細は、10月17日付けで「Nature Communications」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-12664
死へのカウントダウン「テロメア」を止められるか
寿命の長さは、細胞分裂の回数によって決まります。
ヒトや動物の胚細胞は分裂を繰り返すことで成長していきますが、一生涯で行われる分裂回数は最初から決まっています。
分裂のスピードが落ちることは「老化」と呼び、ついに分裂できなくなった時が「生の終わり」を意味するのです。
この分裂回数を決めているのが「テロメア」という染色体の末端にある構造です。
テロメアは、細胞の染色体の端っこに付いており、染色体を保護する役目を持ちます。
細胞分裂のたびにテロメアは短くなっていき、完全になくなると分裂はストップします。テロメアは、生まれたときに1万5千ほど存在し、35歳ほどでその半分、2000を下回ると身体は老化状態に入ります。
ただし、テロメアの減少スピードは、日々の生活習慣や心的ストレス、運動不足、寝不足などで変わります。要するに、寿命の長さは、死へのカウントダウンであるテロメアをいかに止めるかが鍵となるのです。