- 睡眠には脳の単純な機能を改善する他に、感情の制御にも影響していることがわかった
- 不安な脳を落ち着かせ感情をリセットする効果は、深い睡眠(ノンレム睡眠)がもっとも効果が高い
- 眠れない夜は、感情的ストレスレベルが最大30%上昇することが明らかになった
不安で眠れない夜というのが誰にもあると思います。しかし、実際は眠れないことが余計な不安を生んでいるのかもしれません。
睡眠が脳にとって重要なことはよく話されている事実ですが、実は感情をコントロールするためにも重要な役割を果たしていることが最新の研究により明らかになりました。
特に深い睡眠は、私たちの不安な感情さえリセットしてくれる働きがあるというのです。
一晩寝ると不安が解消される、ケンカしても翌日には機嫌が治る、こうした作用の裏にはノンレム睡眠の持つ隠れた働きがあったのです。
この論文は、カルフォルニア大学バークレー校の研究チームより発表され、人間の行動科学全般を取り扱うオンラインジャーナル『Nature Human Behavior』に11月4日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41562-019-0754-8
睡眠と不安の関連を調べる実験
研究では、18人の若者に被験者となってもらい、一晩しっかり睡眠をとった後や、眠らずに夜を過ごしてもらった後に、感情が揺れ動くようなビデオクリップを視聴してもらい、脳の状態をスキャンしました。
脳状態の確認には、脳の局所的神経活動を検出する機能的MRI (fMRI) が、睡眠状態のチェックには睡眠障害の診断に用いられる睡眠ポリグラフ検査が利用されています。
また、不安レベルの検査にはSTAI(状態‐特性不安尺度)と呼ばれる心理検査の質問票が使われました。
一晩睡眠を取らなかった後の脳スキャンでは、内側前頭葉前皮質の機能が停止していることがわかりました。これは簡単に言うと感情のブレーキが上手く効かなくなっている状態と言えます。
この後、被験者の頭に電極を付けて一晩睡眠をとってもらったところ、不安レベルが有意に低下していることがわかりました。これは感情を調節する前頭前野の機能が熟睡状態のときに機能回復していたためで、この反応はノンレム睡眠の中でも特に深い眠りとされる徐波睡眠のときに顕著に現れていました。
研究では18人の睡眠と不安の関連性を評価した後、追加で30人の被験者を集めて再現実験を行いました。この追試でも、深い睡眠を十分にとれた被験者がもっとも低いレベルの不安しか感じないという結果を示しました。
さらに、この研究は全年齢を対象に280人の参加者をオンライン上で集め、4日間の睡眠と不安のレベルに関する変化についても調査を行ったのです。
これらの結果から研究者たちは、参加者の一晩の睡眠の量と質がわかれば、翌日感じる不安のレベルを予測することが可能になったと語っています。