- 火星のゲール・クレーター上空で、酸素の予測不能なサイクルが検知されている
- 火星の土壌内に未発見の酸素が隠されている可能性もあるが、原因は今のところ不明
居住地候補ではありますが、大気が薄く、微量の酸素しかない火星。移住計画には未だに様々な障壁があります。
しかしNASAのゴダード宇宙飛行センターは、12日、火星のゲール・クレーターにおける酸素の奇妙な循環現象を報告。しかも、いまだに専門家ですら説明できない状況なのです。
研究の詳細は、11月12日付けで「Geophysical Research」に掲載されています。
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2019JE006175
土壌内に大量の酸素?
ゲール・クレーターは直径154km、火星の赤道付近にある平原に位置しており、恐らく約35億〜38億年前に形成されたものです。同地では、NASAの火星探査機「キュリオシティ」が、2012年から大気の測定を行なっていました。
キュリオシティの採取したデータによると、火星大気は95%が二酸化炭素で、残りの5%は窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素となっています。
大気の動きとしては、冬時期に極地で二酸化炭素が凍ると火星全体の気圧が落ち込み、反対に暖かい時期に二酸化炭素が蒸発すると気圧が再び上昇します。
その中でアルゴンと窒素は、待機中の二酸化炭素量に応じて上昇と下降が予測できるのですが、ゲール・クレーター上空の酸素は違いました。
キュリオシティの観測では、春や夏の暖かい時期に酸素は予想より30%ほど多く上昇しており、冬にも同じように予測に反した急落を見せていたのです。
これに関して、研究主任のメリッサ・トレイナー氏は「未発見の酸素源が土壌内に隠されている可能性も考えられる」と話します。
この現象は、同地で以前確認されたメタンの動きと似ています。メタンも原因は不明ですが、夏時期に検知量が60%増加し、冬時期に急落する動きを見せていました。
そのことから、酸素とメタンの間に何らかの結びつきがあると推測されます。酸素とメタンはともに、微生物の活動による「生物学的原因」と、水と岩の相互作用による「地質学的原因」のどちらでも生成されるものです。
研究チームは現在、酸素の予測不能なサイクルは「火星の土壌に原因がある」としていますが、たとえそうであっても、土壌中で何がこれほど大量の酸素を大気中に放出あるいは吸収しているのか、まったく見当がついていません。