歯周病菌が脳を蝕む
歯の病気と脳の病気は一見結びつきがなさそうに感じます。しかし、アルツハイマー病患者の脳からは歯周病の原因菌とされるPg菌というものが検出されていて、以前からその関連性が注目されていました。
今回の研究チームは、歯周病がアルツハイマー病の発症と関係していることを明らかにするため、中年のマウスにヒトの歯周病炎症組織および歯周病の原因菌を投与し、その肝臓を調査しました。肝臓は脳内を始め血中に生産された成分の多くが集まる場所です。
結果、歯周病菌が投与されたマウスからはアルツハイマー病の原因物質と考えられているタンパク質Aβが増大していることを発見したのです。
マウスがこのような状態になった原因は、マクロファージにありました。マクロファージは免疫系を司る白血球の一種で、細菌などの侵入に反応して炎症(免疫反応の一種)を起こします。歯周病菌によって炎症を起こしたマクロファージは、アルツハイマー病の原因となるAβを作り始めるのです。
つまりアルツハイマー型認知症の原因は、歯周病菌に感染した白血球が原因だったのです。
アルツハイマー型認知症の進行は非常に長い期間の中で進行する病気です。それは25年近くを掛けて体内に蓄積されていくAβタンパク質が原因です。これが歯周病菌によって引き起こされているという事実は、歯科医療によるアプローチがアルツハイマー型認知症の進行を遅らせるのに有効という驚くべき可能性を示しています。
そうして考えてみると、歳をとっても頭のはっきりしているご老人は綺麗な歯をしていることが多いのかもしれません。
80歳まで20本の歯を保つ、なんて標語は歯医者さんに行くとよく見かけますが、これは脳を健康に保つためにも必要なことのようです。