- AD1〜8にアフリカのエチオピア地域で栄えた「アクスム王国」の遺跡の一部が発掘される
- 発掘された遺跡は、古代ローマとアクスムを繋ぐ貿易ルートの要である可能性が高い
紀元後1〜8世紀頃に現在のエチオピア地域で栄えたアクスム王国。サハラ以南のアフリカでは、コインを鋳造し、キリスト教を受容した最初の国と言われています。
ジョンズ・ホプキンズ大学(米)により、このアフリカ大陸の伝説的な王国・アクスムの遺跡が発見されました。
しかし、あらゆる古代文明の中で最も重要な国の一つでありながら、その知名度はほとんどありません。今回発見された遺跡は、謎に包まれたアクスムの秘密を解明する大きな一助となりそうです。
研究の詳細は、「Antiquity」に掲載されました。
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/beta-samati-discovery-and-excavation-of-an-aksumite-town/
アクスムの主要都市を発見か?
発見された遺跡(発掘作業は2011年〜2016年)は、同地域のティグリニャ語で「客人の家」を意味する「ベタ・サマティ(Beta Samati)」と名付けられました。伝説の「アクスム」という名は現在もエチオピアの都市として残っており、ベタ・サマティはこのアクスムの北東に見つかっています。
アクスム王国の全盛期は、現在のエリトリア・北部エチオピア・イエメン・北部ソマリア・北部スーダンにまで広がっていました。
一方で、ベタ・サマティの発見は従来の調査結果に異を唱えるものとなっています。
アクスム王国の遺跡発掘は1970年代にも複数回行われており、いくつかの仮説が立てられています。
仮説の一つによれば、ベタ・サマティのあった地域は、アクスム建国以前の国家が崩壊した後、わずか数カ所の小さな農村集落を残しただけだと思われていました。
しかし、今回の発掘により、アクスム以前〜アクスム建国の間には、強い連続性があったと考えられています。
ベタ・サマティが政治的・経済的に重要な役割を持ったことを示す数々の遺物が見つかっているのです。中には、コインやローマ人の影響をはっきり受けた金の指輪、キリスト教の教会堂などが見つかっています。
研究主任のマイケル・ハロワー氏は「アクスム王国は、ローマ帝国や古代インドと貿易関係を結んでいたことが分かっており、ベタ・サマティは、この貿易ルートの要となっていた可能性が高い」と指摘します。
また、黒石が使われたペンダントも特筆すべきものです。
表面には、キリスト教の十字架とエチオピアの古代ゲエズ語で「尊者(venerable)」を意味する言葉が刻まれています。ローマと繋がりを持つアクスムの僧侶が身につけていた可能性が高いでしょう。
ベタ・サマティはアクスム王国のほんの一角に過ぎず、その大部分がいまだ謎に包まれています。
定説として、アクスム王国は、7世紀頃にイスラム教が権力を持ち始めたことで新興のイスラム勢力に圧迫され、徐々に衰退していったようです。
しかしアクスムの秘密は、未だアフリカの大地に隠されています。