小さな暗黒物質の塊を探す
今回の研究が目指したのは、非常に小さな暗黒物質の塊を探すことです。
銀河の様な星が密集した場所では、大規模な暗黒物質の塊が存在する証拠を見つけることができます。しかし、星がない空間に小さな暗黒物質の塊がある場合、それを見つけることはできるのでしょうか?
そこで研究チームが利用したのが、クエーサーという非常に明るい遠方の天体です。
このクエーサーと地球の間に重力レンズ効果を生む銀河団が存在した場合、重力によってクエーサーの光がどの程度ゆがむかは検証がしやすいものとなります。

研究では、重力レンズ効果によって4つに分裂して見える8つのクエーサーを観測しました。クエーサーは地球から約100億光年の距離にあり、重力レンズを生む前景銀河は地球から約20億光年の位置にあります。
通常重力レンズ効果を起こすためには、全ての天体が一直線に整列する必要があります。そのため、4つに分裂して見えるというのはかなり稀な現象です。
暗黒物質の塊がある場合、それはクエーサーの見かけの明るさや位置をずらしてしまいます。研究者は測定値から暗黒物質の影響がない場合に予想されるクエーサーの画像と実際の見え方を比較しました。
これは重力レンズという滑らかな虫眼鏡のレンズ表面から、暗黒物質という僅かなヒビを探すような作業です。
そして、研究チームは観測データから天の川銀河の暗黒物質質量の1万分の1から10万分の1という、非常に小さな暗黒物質の塊を検出したのです。
研究者によると、こうした小さな構造の数は、暗黒物質の粒子特性と関係しているといいます。小さな暗黒物質の塊を数えることで、暗黒物質の粒子としての物理的特性を学ぶことができるのです。
現在のところ、暗黒物質が何であるかはわかっていません。おそらくは既存の物質と小さな相互作用しか起こさない未知の素粒子であるという考え方がされています。
近く稼働する予定のジェームズウェッブ宇宙望遠鏡や広視野赤外線測量望遠鏡(WFIRST)などの新型望遠鏡は、こうして積み上げた知見を元に、暗黒物質の正体を明らかにしてくれるかもしれないと言われています。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は2021年に打ち上げが予定されています。果たして、私達が生きている内に暗黒物質の正体は明らかになるのでしょうか? ひょっとしたらそれは意外とすぐなのかもしれません。