- 人の合図に反応し、ボールを取ってくる能力が、オオカミにも存在することが判明
- 人の合図を理解する「認知能力」は、犬とオオカミが別れる以前に存在したことを示唆する
ボールやフリスビーを投げて犬に取って来てもらう、いわゆる「取ってこい遊び」。これには、飼い主の合図を理解する認知能力が必要です。
これまで、この認知能力は、人に飼いならされた犬にしか見られないものと思われていました。
ところが今回、スウェーデン・ストックホルム大学の研究により、オオカミの子どもも合図に反応して、ボールを取ってくることができると判明したのです。
この結果は、認知能力が家畜化によって獲得されたという定説を覆すかもしれません。
研究の詳細は、1月16日付けで「Journal iScience」に掲載されました。
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(19)30557-7
認知能力は「家畜化」以前に存在した?
この驚くべき発見は、研究チームが、通常は子犬に対して実施する行動評価テストを、子オオカミに対して行った時に起こりました。3頭の異なる母親から生まれた子オオカミ13頭の内、3頭が人の投げたボールに興味を示し、さらに合図に従って、ボールを取って来たのです。
研究主任のクリスティーナ・ハンセン氏は「オオカミの行動を目にした時、文字通り鳥肌が立ちました。というのも、人の合図を理解するための認知能力は、これまで、約1万5000年をかけて家畜化された犬にしか見られなかったからです」と話します。
これを受けて、研究チームは、生後10日から子犬と同じように育てた子オオカミ対して追加テストを行いました。内容は、知らない人が投げたテニスボールを、その人の合図に従ってきちんと取ってくるかを試験するものです。
確かに、実験したほとんどのオオカミはボールに興味を示しませんでしたが、やはりその内の数頭は、ボールに反応し、取ってくることができました(動画)。
犬は、オオカミが長年の家畜化を経て派生した種類と考えられていますが、この結果から、認知能力は、犬とオオカミが別れる以前にすでに存在した可能性を示唆しています。
研究チームは、今後、同じ条件下で育てた犬とオオカミについて、家畜化が与えた影響の違いなどを調べていく予定です。