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SFの世界。火傷を負った皮膚の上に「新しい皮膚を3Dプリント」する技術が開発

2020.02.05 16:23:59 Wednesday

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映像ではバイオインクを視覚的にわかりやすくするために、青色の色素を混ぜている。バイオインクには幹細胞が含まれている/Credit:IPO science.Published 4 February 2020
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  • 火傷を負った皮膚に「皮膚を3Dプリント」することで治せる技術が開発された
  • プリンターのカートリッジには幹細胞が含まれており、治療効果を劇的に上げている

世界中で毎年50万人の人々が火傷を負っており、多くの人が亡くなっています。

これまでの重度の火傷治療方法は自家皮膚移植が行われてきましたが、火傷が全身に及んでいる場合は、利用できる健康な皮膚が残っていません。

そのため大きな火傷では、十分な健康的な皮膚が利用できないため、患者が死亡するケースが少なくなかったのです。

そこで研究者たちは、組織の再生を促進する能力がある幹細胞と、コラーゲンのような再生の足場を提供するタンパク質から成るバイオインクを作りました。

そして、このバイオインクを患部に3次元的に塗り重ねることで、組織を素早く再構成することに成功しました。

研究内容はカナダのトロント大学の研究者であるリチャード・Y・チェン氏らによってまとめられ、2月4日に学術雑誌「IOP Science」に掲載されました。

Handheld instrument for wound-conformal delivery of skin precursor sheets improves healing in full-thickness burns
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1758-5090/ab6413

バイオインクに幹細胞を含ませる

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片手で持ち運べるサイズのプリンターで、広範囲の損傷を治療できる/Credit:jamesdysonaward

従来の3Dプリント技術を用いた組織再生には、コラーゲンやフィブリンといった皮膚を構成するタンパク質を用いてきました。

コラーゲンなどには火傷や傷の回復を促進する効果がありますが、再生はあくまで周辺の細胞の働き(分裂・増殖能力)に頼っています。

そのため、火傷が体の深くまで及び周辺組織のダメージが大きい場合には、回復効果は限定的でした。

そこで研究者は、3Dプリントのインクカートリッジ内部にコラーゲンなどに加えて、幹細胞の一種である間葉系間質細胞(MSC)を含ませました。

幹細胞は体のあらゆる細胞に変化する能力があり、損傷部位の組織に付着するとその部分の細胞に変化して増殖します。

そのため研究者は、プリントに幹細胞を混ぜれば失われた細胞を純粋に補充できると考えたのです。

人間の皮膚に近いブタの皮膚を使って実験をした結果、幹細胞の働きによって、失われた皮膚の再上皮化、真皮細胞の再増殖、血管新生が改善されました

このことからも、幹細胞を用いた3Dプリント治療が既存の方法より優れていることがわかります。

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