- NASAの最新研究により、冥王星のハート模様である「トンボー領域」から、自転とは逆向きの西風が発生していることが判明
- 西風は、赤褐色のチリを運ぶことで地表の明暗部を作り、さらに熱を運ぶことで、地形を変化させていることが示唆される
1930年、天文学者のクライド・トンボーが見つけた小さな惑星は、現在、「冥王星(Pluto)」という名前で知られています。
冥王星は、その表面にハート型の模様があることでも有名です。ハートがある場所は、発見者にちなんで「トンボー領域」と呼ばれています。
そして今回、NASA・エイムズ研究センターにより、このトンボー領域から冥王星の自転方向とは逆向きの西風が吹いていることが判明しました。
しかも、この西向きの風が、冥王星表面の地表や地形を形作っている、とも報告されています。
研究の詳細は、2月4日付けで「AGU」に掲載されました。
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1029/2019JE006120
ハートから吹く風は独特?
冥王星の詳しい気候や地表の様子は、2015年にNASAが実施した探査機「ニュー・ホライズンズ」の観測によって明らかにされました。
その後、収集されたデータを用いて、冥王星の気候や大気循環をグローバルスケールでモデル再現することに成功しています。
その結果、冥王星の大気の多くは、地球と同じく窒素で閉められていることが分かったのですが、その大気は地球のおよそ10万倍も薄いようです。
さらに、大気シミュレートをしたところ、冥王星の窒素が、温度変化により気体と固体の状態を繰り返していることが分かりました。
昼になると、窒素は暖められて気体に、夜になると冷却されて固体に変化することで、窒素が循環を起こします。この気流が、まさに冥王星の全域に吹く西風の原動力となっていたのです。
その西風の発生地となっているのが、ハート型のトンボー領域でした。
具体的には、トンボー領域の西側に位置する「スプートニク平原(幅およそ1000キロ)」の上空で、反時計回りの気流が起こり、自転と逆向きの西風が発生しています。
さらに、冥王星の地表に見られる多くの特徴は、この西風によってもたらされた可能性があると示唆されました。
例えば、冥王星には、比較的明るい部分と暗い部分があります。これは、ハートから吹き始めた西風が、地表にある赤褐色のチリを運んで、平原の外側に積もらせることで、トンボー領域の外が暗くなって見えるというわけです。
他にも、西風によって熱が運ばれることで、地形の侵食や変化が起きているのではないか、とも示唆されています。