- 別の銀河系に酸素分子があることがわかった
- 酸素は宇宙空間を浮遊する氷に閉じ込められている
- 超大質量ブラックホールから吹き出すジェットが氷を砕き、自由になった原子は結合して分子になる
宇宙に存在する多くの酸素は、地球上の生命が呼吸に使う分子状態の酸素(O2)ではなく、原子状態(O+)で存在しています。
また金星や火星といった身近な惑星の大気にも、分子状態の酸素はほとんどありません。
私たちの地球も、大気中の酸素濃度が現在のように20%を超える濃度に達したのは、生命の行う光合成によって二酸化炭素分子から酸素分子が作られるようになったからなのです。
ゆえに、地球とよく似た環境の惑星において高濃度の酸素濃度が確認されれば、生命が存在する確率が飛躍的に高まるとされます。
今回、天文学者たちによって、私たちの銀河から5.6億光年離れた位置にある「Markarian 231」と呼ばれる銀河にある超大質量ブラックホールの周辺にも、分子状の酸素があることが観測されました。
天の川銀河系の外に酸素分子の存在が確認されたのは観測史上初めてです。
本来、ブラックホールと「生命」や「酸素」といった単語は結びつきにくい印象がありますが、一体どのような仕組みで酸素分子が作られているのでしょうか?
研究結果は上海天文台中国科学院のJunzhi Wang氏らによってまとめられ、1月30日に学術雑誌「Astrophysical Journal」に掲載されました。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab612d
宇宙では酸素分子は貴重
酸素は水素とヘリウムに次いで宇宙で3番目に多い元素で、132億光年離れた銀河でも電離した酸素原子は確認されています。
しかし分子状の酸素(O2)を求めて太陽系の外に目をむけると、急に探索が難しくなります。
これまで行われた天の川銀河系全体の探索でも、ローオフィウチ雲とオリオン星雲の2ヶ所からしか分子状の酸素の存在は確認されませんでした。
その理由は、酸素原子が水分子と塵粒状に凍結して、宇宙空間から一掃されてしまったからだと考えられています。
宇宙空間では、思った以上に酸素分子は貴重なのです。