■132億光年離れた銀河から大量の塵と酸素が発見される
■宇宙誕生から6億年で大量の星の生死が繰り返されたことを示唆
■理論的予想を大きく外れた観測結果が謎を深める
以前の記事でも紹介した視力6000相当の望遠鏡のアルマ望遠鏡ですが、また新たな謎を発見してしまったようです。
名古屋大、東大、大阪産業大の研究チームが、地球から132億光年離れた銀河から大量の塵と酸素を発見しました。
この研究の論文はアメリカの天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されました。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab0374
新たな発見と深まる謎
ビッグバンの直後、宇宙は水素とヘリウム、ごくわずかなリチウムの3つの元素で出来ていました。他の元素表にあるお馴染みの物質も、宇宙に広がるガスから出来た星の内部で、核融合が起きてから生まれたものです。
星の一生が終わると爆発が起こりますが、このタイミングで水素より重い、これまで核融合で作られてきたヘリウムや炭素、酸素などの元素が宇宙へ撒き散らされます。こうして宇宙により重い元素が徐々に増えていくというのです。
研究チームはこの過程で生まれた酸素や塵が発した赤外線由来の証拠をアルマ望遠鏡で捉えることに成功しました。今回観測した銀河は名前をMACS0416_Y1といい、地球から132億光年の距離に位置しています。
今回観測された塵は、観測史上2番目に遠く離れたところにある塵だそうです。
宇宙誕生が138億年前と言われているので、132億年先から地球に届いている光はもとの銀河が宇宙誕生から6億年程度経った頃に発していた光ということになります。これは宇宙が誕生してから6億年までの間に、この銀河で多くの星が生まれ死んでいった証拠です。
以前より、宇宙誕生後10億年未満の銀河には、理論予測より多い塵が存在するといわれていました。しかし今回の観測結果により、さらに早い段階で大量の塵があることが判明し、謎が更に深まった結果になりました。
研究チームでは他にも、塵や赤外線の量から、この銀河がどういう状態だったのか、辻褄の合う星形成モデルを立てることに成功しています。モデルによると、生まれて3億年程度の星と、生まれたばかりの星の2つの状態のものが共存していれば説明がつくそうです。
なぜ理論予測より多い塵が発生しているのかについては、俺たちの戦いはこれから…という感じですね。