「Markarian 231」銀河で酸素分子が生じた仕組み
そんな貴重な酸素分子ですが、今回Markarian 231銀河にある超大質量ブラックホール周辺で大量に観測されました。
上の図のように、超大質量ブラックホール(左)は吸い寄せた物体の一部を、ジェットとして上下に何万光年にも渡って吹き出します。
一方で普通のブラックホール(右)にも同じジェットの吹き出しがありますが、その勢いは非常に限られているのです。
超大質量ブラックホールが放つ強力なジェットが周辺の酸素原子を取り込んだ塵に命中すると、衝撃によって水氷が砕けます。
そして内部に捉えていた多数の酸素原子が開放され、酸素原子同士の結合によって純粋な分子が形成されます。
結果、ブラックホールの上下の区画に酸素分子が豊富な区域が誕生するのです。
これまでは、酸素は生物の存在を示す証拠だと考えられてきましたが、超大質量ブラックホールはまさに非生物的な力技で、宇宙空間に酸素分子を作っていたと言えます。
ですが、この力技は思わぬ副産物を生む可能性があります。
ジェットが塵に命中して生まれた酸素には冷却材としての作用があり、周囲の高温ガスから熱を奪って固形化を推し進めるのです。
そして熱いガスが冷えて小さな粒子が増えていくと、それら粒子がぶつかりあいながら成長し、星が生まれます。
超大質量ブラックホールが生み出す酸素は、生命を生み出す代わりに星を生み出していたのです。
reference: interestingengineering, sciencenews / written by ナゾロジー編集部