- カイパーベルトで発見された、最も遠い微惑星アロコスに付いて3つの新しい論文が発表された
- アロコスの表面は有機分子の影響で赤色に見え、その表面組成は均一である
- この理由は、アロコスが分子雲の重力崩壊により静かに誕生したためで、原始からほぼ変化していない
その独特の姿から、発見当初より「じゃがいも」「雪だるま」と呼ばれていた微惑星アロコス。冷たい古典的なカイパーベルト天体で、地球から70億キロメートル近く離れた場所に存在しています。
カイパーベルトとは海王星より外側の軌道にある天体の密集した領域のことです。
軌道周期が200年を下回る彗星はすべて、このカイパーベルトが故郷だと言われています。
小惑星は自ら光らず、非常に遠いため、カイパーベルトに存在する天体は多くの謎に包まれています。
NASAの探査機「ニューホライズン」は現在そんなカイパーベルト内を進んでいて、これまででもっとも地球から遠い微惑星アロコスについて、多くの情報をもたらしてくれたました。
ニューホライズンのプロジェクトチームが最新の研究成果を3つの新しい論文で発表。最初のレポートの10倍以上のデータに基づき、アロコスの起源についてより完全に近い報告をしています。
関連論文は、2月13日付けで科学雑誌『Science』に掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/early/2020/02/12/science.aay6620
冷たい古典的なカイパーベルト天体
太陽系を訪れる彗星は、一体どこからやってくるのでしょうか?
実は軌道周期が200年以内の「短周期彗星」と呼ばれる天体は、みなエッジワース・カイパーベルト(略してカイパーベルト)が故郷と言われています。
カイパーベルトは海王星より外側にある天体の集まった領域です。
ここから彗星がやってくるという根拠は、短周期彗星の軌道が、360°バラバラな方向から飛んでくるのではなく、太陽系の惑星と同じ横道面に沿った角度で飛来するためです。
「長周期彗星」は角度がもっとバラバラに飛んできていて、これはもっと外側で太陽系を球状に囲んでいるオールトの雲と呼ばれる領域から来ていると考えられています。
カイパーベルトの約3分の1は「冷たい古典的な」カイパーベルトと呼ばれていて、今回の主役アロコスもこの領域に属しています。
ここでいう冷たいとは、表面温度のことではなく軌道の持つ運動エネルギーについて表したものです。この領域では巨大惑星などの重力の影響がなく、天体はほとんど動きません。
そのため太陽系形成以来、太陽からほぼ同じ距離に留まっています。
古典的と表現されるのは、1950年代にジェラルド・カイパーが予想していた軌道に似ているためです。
そんなわけで、ここで発見されたアロコスは、非常に原始的な太陽系の様子を変わらず伝える貴重な天体と考えられているのです。
研究者はアロコスについて、「化石が地球上で種がどのように進化したかを示すように、この微惑星は惑星が宇宙でどのように形成されたかを教えてくれます」と説明しています。