オーロラは「雉の尾」の形
また、注目したいのは「雉の尾に似ている」という表現です。
雉の尾羽はディスプレイ行動や母衣打ち(ほろうち)を見せる際、特徴的な扇型に変わります。
ディスプレイ行動とはオスがメスに対して尾羽をアピールする行動で、母衣打ちは、翼を激しく打ち立てて音を出す行動です。
問題は、原文をよく見れば分かるように、正確には「雉尾(きじお)」ではなく「碓尾(うすお)」と記載されていることです。
しかし、この点については明治の研究者である飯田武郷により解答されており、飯田は「初期写本の多くに「似碓尾」との記載が確認されており、これは「似雉尾」を誤写した結果だろう」と述べています。
以上をまとめると、当時の人々が、夜空に突如出現したオーロラを見て天の使いと考えられていた雉に例えたのだと推測できるでしょう。
同時代の中国ではオーロラを城や旗に例えて恐れていたのに対し、日本人は美しい動物に例えていたようで、国ごとの文化的な感性の違いが見られます。今回のような研究は天文分野だけでなく、今後の人文学的研究の一助にもなるでしょう。