核電気共鳴の発見は、ペニシリンの発見に相当する
今回の研究で、単一原子の磁極制御を、磁気を使わず電気で制御する道が開かれました。
実験を監修したニュー・サウス・ウェールズ大学のアンドレア・モレロ教授は核電気共鳴法の発見は、ペニシリンの発見に等しい価値があると述べています。
核電気共鳴法は、医療現場で使われている断層撮影の性能も大幅に上げられると考えられるからです。
既存の核磁気共鳴法を使ったMRIは強力な磁気を発生させるために大電力を必要としています(電力を磁力Mに変換するため)。
また、磁極化に空間的な広がりを持つ磁気を使っているために、細かな制御に限界があり、得られる画像はお世辞にも高画質とは言えません。
しかし核電気共鳴法は電気を直接、狙った部分に注ぐことができるために、断層撮影の消費電力を大幅に削減することが可能です。
さらに単一原子レベルの磁極化ができるので、MRIで使用される核磁気ではなく、核電気共鳴法を使った「ERI」は、超高精密な画像を得られると考えられます。
また医療分野以外にも、核電気共鳴を応用することで原子レベルの超高精度センサーの設計が可能になる他、量子コンピューターのビットを全く新しい方法で制御でき、開発速度を大幅にスピードアップさせられます。
基礎物理の分野においては、古典的物理世界が量子力学的世界からどうやって誕生したかを解き明かすツールになると考えられます。
ですが、これらの展望も序の口と言えるでしょう。
核磁気共鳴法の発見前の世界に住む人々は、MRIのような核磁気共鳴法の発見後の技術を想像するのは難しいからです。
核電気共鳴法の発見前の世界に永らく住んでいた私たちも、まずは何ができるかを探すことから研究を始める必要がありそうです。
この研究内容はオーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ大学のセルワン・アサード氏らによってまとめられ、3月11日に学術雑誌「nature」に掲載されました。
記事内の一部を加筆して再送しております。