コヨーテとアナグマは、北米の先住民族に伝わる民間伝承の中で、しばしばペアで登場します。
時に友人として、時に競争者として語られましたが、温厚なアナグマが野生的なコヨーテの引き立て役という基本的な骨子があるようです。
こうした物語は、何も先住民たちの絵空事ではなく、実際に彼らが自然界で目撃した光景でした。
コヨーテとアナグマが協力して狩りをすることが研究され始めたのは比較的最近のことですが、先住民たちは数世紀前からすでに知っていたのです。
ライバル、それともチーム?
コヨーテは、北米大陸に広く生息するイヌ科の動物で、1800年代以来、北米中西部の大平原グレート・プレーンズから全土に広がっていきました。
見た目はオオカミそっくりですが、体は小さく、体重は平均で9〜20キロしかありません。
小さなげっ歯類を好物としますが、食料が追いつかなくなると、ヘビやカエル、昆虫にも手を出します。
そして、コヨーテと同じ場所にアナグマも住んでいます。
アナグマも小型のげっ歯類を主食にしますが、コヨーテのように追いかけるのではなく、長い爪や突き出た鼻先を使って、地中に逃げ込んだ獲物を捕まえます。
コヨーテとアナグマが同じ動物を獲物とするなら、本来はライバル同士です。
ところが、近年の研究では、彼らがお互いの強みを活かして、ともに狩りをする様子がよく目撃されています。
実際、コヨーテは仲間と一緒に狩りをするより、アナグマと協力した方が狩りの成功率は3倍以上アップするのです。
基本的な狩りの流れを説明すると、獲物が地上にいる時はコヨーテが俊足を駆使して追いかけ、地中にもぐり込むとアナグマが引き継ぎます。
さらに、小さくてすばしっこい獲物に対して、狩りの作業を分担することは、エネルギーの節約にもなります。
コヨーテはアナグマよりも目が良く視野が広いので、獲物を見つけるのに優れており、また追いかけるのも得意です。一方のアナグマはコヨーテより鼻が効くので、一度見失った獲物を地中まで追跡することができます。
例えば、地面にもぐり込んだ獲物をアナグマが掘り起こし、地上に逃げ出した獲物を待ち構えていたコヨーテが捕まえます。もちろん、この逆パターンもあります。
だからと言って、彼らが友人同士であることを意味しはしません。本質的には、同じ獲物を狙うライバルなので、最終的に捕まえた方の総取りということもあります。
現実はおとぎ話のようには行かない…と思いきや、今年2月にアメリカで不思議な光景が目撃されました。
こちらは、カリフォルニア州のとある高速道路の下の監視カメラに映り込んだ映像です。
なんとコヨーテとアナグマが土管の中を連れ立っていたのです。
「はやく、はやく」「ちょっと、待ってな」といった感じで、仲良く歩き去っていきました。
ひょっとしたらコヨーテとアナグマは無二の親友同士で、獲物もあとで分け分けしているのかもしれませんね。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/54904