人間には作れないスマートなウイルス認識部位
実験ではまずラマにSARSとMERSのワクチンを与えることからはじまりました。
新型コロナウイルスはSARSとMERSの近縁であるために、新型コロナウイルスに対しても効果のある抗体をラマが作ってくれると考えたからです。
研究者の予想は当たり、ラマが作った重鎖抗体は新型コロナウイルスに対して高い効果がありました。
次に研究者はラマの抗体の先端部分の構造を解読して、先端部分だけのナノボディー(VHH-72)を作りました。
上の図のように、人間の抗体は2つの先端部分が合わさって一つの抗体を認識する必要がありますが、このラマの作る重鎖抗体の先端部分(ナノボディー)は、単独でもウイルスが認識可能です。
そのため、ナノボディーと他の抗体のパーツを組み合わせることで、あらゆる種に対しても効き目のある抗体を作ることが可能となります。
実験ではナノボディを人間の抗体のFc部分(根元の抗原提示部分)と結合させる合成抗体がつくられました。
この合成抗体は新型コロナウイルスに結合して直接的に感染を妨害する以外にも、免疫システムを活性化させる働きが期待できます。