宇宙を広く素早く撮影
TESSは通常4台のカメラで30分ごとに空の広い範囲を撮影しています。しかし、たて座δ型変光星は数分で脈動する非常に変化の早い星のため、30分ごとでは調査になりません。
そこで、TESSに2分間隔で撮影してもらい、そのデータを分析しました。
たて座δ型変光星は数千個も発見されています。TESSは2分ごとの撮影でこの数千の星を一挙に撮影しているのです。
このデータからは、合計の60個のたて座δ型変光星に明確なパターンが見つかりました。
これは画期的な発見で、このパターンを利用することで、他の星の解析も行うことが可能になるそう。
なぜ不規則な脈動をするたて座δ型変光星の中に、規則的な脈動をするものが見つかったのか? という点については、次の2つの要因が考えられます。
1つは、たまたま星が地球に対して赤道側ではなく極点を向けていた場合です。
先に説明した通り、たて座δ型変光星は楕円形をしていて、内部の信号が表面に伝わる速度が乱れることで脈動が乱れます。そのため極点側からの観測だと、比較的乱れの少ないパルスが検出されるのです。
もう1つの要因は、非常に若い星が含まれていた場合です。
星の脈動は、星中心の核融合が影響しています。ここから放たれる信号は、生まれたばかりの星では非常に早く、星の年齢が上がるにつれて遅くなっていきます。
老いた星ほど、複数の周波数が混ざり合って複雑な信号になってしまうため、若い星ならば規則的な周期を発見しやすくなるのです。
この脈動を音波に直してみると、この動画のようになるのだそうです。こうした音波が星内部で跳ね返り星の明るさを変化させます。
科学者はこの複雑なパターンから星の脈動タイプを推定して、星の年齢などを知ることができるのです。
単純なパターンを発見して、振動のモードを特定できるようになれば、より多くの星の特徴を適切に把握できるようになると、研究者たちは語っています。
この研究は、マサチューセッツ州ケンブリッジのMITが主導し、NASAのゴダード宇宙飛行センターを初め世界中の十数の大学、天文台が協力する国際研究チームより発表され、論文は科学雑誌『Nature』に5月13日付で掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2226-8