コケ玉の転がる仕組み
研究者らは過去にコケ玉の解剖も行っていました。
彼らが残した記録によると「コケ玉は複数種類のコケの混合から作られており、総じて内部に小さな石が含まれている」とのこと。
また近年の研究でも解剖が行われ、コケ玉の内部にはトビムシやクマムシ、線虫などの無脊椎動物が暮らしていることが明らかになりました。
コケ玉の持つフワフワとした構造が熱を溜め込み、氷河地帯のなかで生き物の生活の場として機能していたのです。
しかし、やはりコケ玉を転がすような駆動力のある構造は内部にみつかりませんでした。
そこで研究者は、コケ玉内部の温度が下にある氷を解かすかもしれないと考え、ある仮説を立てました。
下の図はその仮説の内容を示しています。
仮説ではまずコケ玉は自らの保温能力によって底の氷を溶かし、結果として台座のような構造の上に座ることになります。
そして台座の傾きが限界を超えると、コケ玉は台座から転がり落ちて移動を完了させるとのこと。
今回の研究でも上の写真のように、台座の上に乗っているコケ玉が確認されており、これらのコケ玉はまさに移動中であると考えられました。
しかし、この仮説だけではコケ玉の移動方法を完全に説明することができませんでした。
というのも、上のコケ玉の断面図の写真からもわかる通り、上部で茎を成長させているものがあるからです。
つまり、コケ玉の中には上下が存在しています。
このことは、仮説通りに転がってしまえば、上部に伸びている茎が折れてしまうことを示します。
そのため、コケ玉にはまだ未知の移動方法が存在していると研究者は考えています。