- 衛星ダイモスの傾いた軌道は、火星リングからの衛星形成モデルで説明ができる
- 火星のリングは2017年に発表された仮説だが、この研究はその事実を補強するもの
- 衛星フォボスは火星に向けて少しずつ落下しており、1億年ほどでロシュ限界を超えて再びリングになる
火星には非常に近い場所を回る大きな第1衛星フォボスと、離れた位置を回る小さい第2衛星ダイモスが存在しています。
この2つの衛星は、かつて小惑星が火星の重力圏に捕らえられて形成されたと考えられていました。
しかし、2017年に発表された研究では、小惑星が火星に衝突することで巻き上げられた物質が、火星にリングを生み出し、それがくっついて生まれたという仮説を提唱しています。
かつての火星には、土星のようなリングがあったらしいのです。
新しい研究は、この仮説を裏付ける新たな事実を発見したと発表しています。
その秘密は、外側を回る小さいダイモスの、少しだけ傾いた軌道にあるというのです。
火星のリング
火星がリングを持っていたというのはロマンのあるお話ですが、実際のところ、リングを持つ惑星はさほど珍しいものではありません。
リングを持つ惑星の代表は土星ですが、土星ほどはっきりは見えないものの、天王星、海王星、木星もリングを持っており、太陽系の半分の惑星にはリングがあります。
また、太陽系の外縁に浮かぶ準惑星ハウメアや小惑星でもリングを持つものが確認されています。
リングを持つというのは、それほど突飛な話ではなく、わりとありふれたものなのです。
火星の上空100km以上の場所には、地上から巻き上げられたものとは異なるダストの濃い領域があり、かつてリングが存在したことを示唆しています。
そして、火星の持つ2つの衛星フォボスとダイモスも、こうしたリングがくっついて誕生したというモデルが唱えられているのです。