太陽系の現在の状態をシミュレーションしたNASAのEyes on the Solar System. Credit: NASA/JPL-Caltech
- 土星の衛星タイタンはこれまで年0.1cm程度で土星から離れていると予想されていた
- 最近の研究による測定の結果、タイタンは土星から離れる速さは予想の100倍近いと判明
- タイタンはかつてずっと土星に近い位置にあり、45億年かけて現在の120万キロの距離まで移動した
土星に浮かぶ衛星タイタンは、少しずつですが主星である土星から離れています。
これは特殊なことではなく、地球の月にも見られる性質で、重力の差によって生じる潮汐力の影響により衛星は少しずつ主星から離れていきます。
これまでの予想では、タイタンが土星から離れる速度は、年間0.1センチメートル程度という非常に微々たるものだと考えられてきました。
しかし、最近の研究ではもっとずっと速く、従来予想の100倍近い速さでタイタンは土星から離れていることがわかったのです。
これは以前から信じられていたよりも、土星の衛星やリングが、ずっと動的に形成され進化していることを示唆するものです。
土星の月 タイタン
タイタンは太陽系の中でもかなり特殊な衛星です。
サイズは水星よりも大きく、太陽系で唯一大気を持つ衛星です。そしてメタン、エタンなどが液化した川や海を持っていて、その下には水による氷の層も存在しています。
場合によっては生命を宿す可能性さえ考えられる衛星なのです。
このタイタンは、これまでの理論では土星から年間0.1センチメートルの距離で離れているものの、最初から現在のような軌道距離で形成されたと考えられてきました。
衛星の軌道が拡大していくことは珍しいことではなく、私たちの地球に浮かぶ月も、年間3.8センチメートルという割合で地球から遠ざかっています。
ではいずれ月は地球から離脱してしまうのか? と心配になりますが、このペースで計算した場合、60億年後に膨張した太陽に地球が飲み込まれるまで、月を失うことはありません。
タイタンも同様で、大きく土星との位置関係が変わっていることはないと考えられてきました。
しかし、10年渡ってタイタンの軌道を測定した2つの研究によって、それが間違いであることが示されたのです。