- 新たな諜報技術として、部屋に吊るされた電球から盗聴するシステムが発表された
- 音波を電球の揺れからリアルタイムに再現するもので、ハッキングも室内へのデバイス設置も不要
- 現状では、傘やカーテン越しの盗聴はできず、大音量でないと検出できない
スパイの7つ道具というものに、子供の頃ときめいた人は多いのではないでしょうか?
そんなスパイの秘密道具に、新しく脅威のシステムが追加されました。
それはなんと、離れた場所から部屋の電球を望遠鏡で監視するだけで、室内の音を盗聴できてしまうというものです。
室内の振動を読み取るタイプの盗聴システムは過去にも報告があります。しかし、このシステムは大規模な装置を必要とせず、わずか4万3千円ほどで実現できてしまうのです。
現状では制約も多いようですが、近い将来、窓越しの光で盗聴されてしまう日が来るかも知れません。
電球の振動で盗聴
遠い宇宙の天体は光(電磁波)だけを頼りに、その成り立ちや構造まで分析しています。
通信技術の多くは、今や光を使うことが当たり前なので、光から多くの情報を読み取れるとしても驚くには値しないかもしれません。
そうはいっても、部屋の電球の振動で盗聴できると言われると、びっくりしてしまいます。
イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学の研究者ベン・ナッシ氏が発表した論文によると、このシステムは望遠鏡と4万3千円の光学センサーだけで、部屋の音声や音楽をリアルタイムに再生できるといいます。
音とは物体の振動によって発生する圧力波です。
そのため部屋にあるあらゆるものが、音によって振動します。
「lamphone」と名付けられたこのシステムは、部屋に吊るされた電球が、音によって肉眼では感知できないほど、ほんのわずかに振動する様子を検出することで、室内で発せられた音を再現します。
研究チームは実験として、およそ25メートル離れた橋の上から、マンションの一室の電球に望遠鏡を向けてみました。
この実験では、室内にイギリスのロックバンド、ビートルズやコールドプレイの音楽、またトランプ大統領の演説を流し、システムでの再現を試しました。
この結果、吊るされた電球表面の空気圧が、音によって非常にわずかに変動することで起きるミリ度レベルの振動を検出して、離れた場所からリアルタイムにスピーチや歌を復元することに成功しました。
再現した音楽を、音楽認識アプリ「Shazam」に聞かせてみると…
ちゃんと認識してコールドプレイの「Clocks」だと表示されています。
実際、電球の揺れから再現された音楽を聞いてみたい人は公式サイトを覗いてみましょう。データが公開されています。
こうした技術はスパイの諜報活動などで活躍するものでしょう。
しかし、研究者のナッシ氏は諜報機関へツールを提供することが目的でこの研究を行ったわけではないと話しています。
彼は、こうした技術研究を公開することで、人々にスパイ攻撃で現在何が可能なのかを認識してもらうことが目的だと説明しています。