電脳ウミウシを薬物依存にするシミュレーションで、生物が”クスリ漬け”になる過程が明らかに
電脳ウミウシを薬物依存にするシミュレーションで、生物が”クスリ漬け”になる過程が明らかに / 薬漬けになった電脳ウミウシのリアルな転落人生をみてみよう/Credit:イリノイ大学 (文字はナゾロジー編集部記入)
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電脳ウミウシを薬物依存にするシミュレーションで、生物が”クスリ漬け”になる過程が明らかに (4/5)

2020.06.22 Monday

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廃人になったアシモフ

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アシモフ君から「好み」が失われ毒でもなんでも目に付いたものを食べて少しでも快楽をえようとする/Credit:イリノイ大学(文字はナゾロジー編集部記入)

研究者がアシモフを哀れに思ったからかは不明ですが、研究者はアシモフに再び薬を与えました。

するとアシモフは再びクスリを食べるようになりました。

ですが今度は少し様子が違います。

禁断症状から回復したアシモフにとって、今や全ての行動原理はクスリを食べることになっており、美味しいエサに見向きもしなくなっていたのです。

研究者はアシモフの心(のような何か)が完全に変質していると気付きます。

そこで、研究者は今度はクスリを減らすのではなく、完全な断薬を行いました。

アシモフはそれでも世界を彷徨いクスリを探しましたが、当然みつけられません。

そして激しい禁断症状がアシモフを襲いました。

今や、アシモフが快楽を得る方法は、食べ物を食べて満腹になる以外には存在しないのです。

そのためアシモフは仕方なく、以前のようにエサを食べて満腹になり、快楽を得ようとしはじめます。

ですがここで再び、研究者は興味深い現象をアシモフにみつけます。

アシモフの周りには以前と同じように、栄養価のある美味しいエサと、栄養価はあっても毒があるエサが置かれたのですが……

上の図のように、アシモフは目の前にある食べ物を、無秩序に食べ始めたのです。

たとえ毒エサの山が目の前に現れた場合にも、アシモフ以前のように避けようとはせず、毒エサに噛り付くようになっていました。

クスリの快楽と禁断症状がもたらした報酬系の激しい変化が「アシモフからアシモフらしい好みを奪っていた」のです。

エサでも毒でも関係なくかじりつくアシモフは、もう以前のアシモフではありませんでした。まさに廃人です。

同じような結果は人間を含めた動物でも知られています。

中毒性の高いクスリは、その動物の固有の動物らしさ(猫なら顔を洗うなど)を奪い、人間からは人間らしさを奪います。

研究者の仮説は実証されました。

人が人であるために必要な人間性もまた、ウミウシの脳のように報酬の上に築かれた、もろい性質を持っていたのです。

次ページクスリ漬けになったアシモフを元に戻せたら画期的な治療薬の青写真になる

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