- シミュレートされたウミウシの脳を薬物中毒にした
- 薬物中毒になったウミウシは動物らしい「好み」を失い毒も食べた
- 動物の複雑な行動や人間の高度な精神性も単純な報酬を得るためだけの簡単な構造である
原始的な「好み」はあらゆる生物に備わっており、栄養価の高いエサの確保から異性の選別といった美的感覚まで、様々な動物の行動を支配しています。
アメリカの研究者は、このあらゆる生物の根源にある「好み」だけでなく、人間の「美意識」も、報酬を得るためだけの非常に簡単な構造であるとの仮説を立てました。
そしてその仮説を実証する手段として、研究者は脳の仕組みが簡単なウミウシ(アシモフと命名)の脳をコンピューターシミュレーションで再現し、薬を使って中毒にすることにしました。
ウミウシの脳は非常に原始的で単純な構造をしていますが、ヒトと同じように記憶や学習が可能であり、食べることをはじめとした基本的行動をとります。
また、その「好み」は報酬によって強く支配されていることが知られているそうです。
そのため、研究者はウミウシの脳のシミュレーション結果を分析することで、「好み」と報酬の関係を探ろうとしました。
電子の世界で学習する仮想ウミウシ「アシモフ」
実験の第一段階として研究者は現実のウミウシに似せた脳細胞数と神経接続パターンをもつ仮装生物(アシモフと命名)をシミュレーション内に誕生させました。
このアシモフには初期状態として食欲と報酬を感じ取る能力が与えられているほか、自身の心や体の状態を一定に保とうとする機能(可逆的恒常性)が追加されています。
研究者はこのアシモフにエサを得る方法を学習させ、エサには栄養価が高い美味しいものと、栄養価はあるもののアシモフの体を傷つける毒入りのものがあることを教えました。
学習が終わると、アシモフは毒のあるエサを避けて、優良なエサを食べるようになりました。
また満腹になると、報酬を得られた満足感から、アシモフは快楽を感じます。
そのため、アシモフは満腹時以外は、食欲と食後の快楽をもとめてシミュレーション世界を彷徨いエサを探し続けました。