兵庫県丹波市にある「篠山層群」は、世界有数の化石産出地として有名です。
篠山層群は、約1億1000万年前頃の白亜紀前期の地層で、これまでに大型竜脚類の化石(丹波竜、2006)が見つかっています。
また、昨年1〜3月に行われた発掘調査では、約1300点の卵・卵殻の化石断片が新たに発見されました。
そして今回、筑波大学、兵庫県立 人と自然の博物館などの研究チームにより、その中から4種類の獣脚類の卵殻が特定され、うち1種類は新卵属・新卵種であると報告されました。
しかも、新卵属・新卵種の化石は、非鳥類型の恐竜卵としては世界最小とのことです。
丹波市が世界一の卵殻産出地に!
新卵属・新卵種の卵殻化石は、「ヒメウーリサス・ムラカミイ」と命名されました。
「ヒメ」は「小さい、可愛い」を、「ウーリサス」はギリシア語で「卵の石」を意味し、「ムラカミイ」は丹波竜の発見者である村上茂氏にちなんでいます。
長さ4.5センチ、幅2センチ、重さは推定10グラムで、ウズラの卵ほどしかありません。サイズや細長い形、卵殻の微細構造から新種と判断されました。
また、2種目の卵殻化石も新卵種と特定されており、「サブティリオリサス・ヒョウゴエンシス」と命名されています。
卵属は「サブティリオリサス」に属し、他にモンゴルやインドで見つかっていますが、日本ではこれが初めてです。
3種目の「ニッポノウーリサス・ラモーサス」は、以前に丹波竜の化石が見つかった地層からも出土しています。
しかし、世界中でも丹波市でしか見つかっていない希少種で、卵殻表面の枝分かれした線模様が大きな特徴です。
そして、4種目の卵殻は「プリズマトウーリサス」の1種で、世界各地で見つかっています。
卵殻表面は非常になめらかで、小型の獣脚類の卵と考えられています。
以上の4つとこれまでに見つかった卵殻化石を合わせると、丹波市では計6種類の恐竜卵が見つかりました。今回の発見により、兵庫県丹波市は、スペイン・テルエル州を抜いて、世界で最も卵殻化石の種類が豊富な場所となっています。
白亜紀前期の兵庫には、小型の獣脚類恐竜が豊かに繁殖していたようです。
小型恐竜は化石として残りづらく、発見も難しいため、大型種に比べて不明な点が多くあります。そうした小型種の生態を知るためにも、今回のような卵殻化石は非常に有用でしょう。
研究チームは今後、篠山層群での発掘調査を続け、なぜ同地が小型恐竜の繁殖地となったのかを解明していく予定です。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/60671
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