- SFの定番、ケイ素生命の可能性を検証する論文がMITの研究者より発表された
- ケイ素は炭素同様、原子価4で多様な化合物を作るため生命のベースとして着目される
- 研究は、ケイ素は溶解させる条件の難しさから、生命になる可能性は低いと結論している
地球以外にも宇宙には生命が存在するのでしょうか?
宇宙に目を向けたとき、多くの人々関心はそこに向けられます。
しかし、数々の研究が地球環境がいかに特別なものであり、生命体が宇宙ではいかに珍しいかということを明らかにするばかりで、一向に生命が生活できそうな環境は見つかりません。
こうした状況でよく耳にする意見が、私たちはたまたま地球環境に生まれたからこのような生命なだけで、異なる環境の惑星には、そこに適応した新種の生命がいるんじゃないか? というものです。
地球生命は基本的に炭素をベースに作られています。しかし、「何も生命を考えるとき常に炭素をベースにする必要はないじゃないか」というわけです。
そうした考え方を反映するように、SF作品にもさまざまなタイプの宇宙生命が登場します。
中でも代表的なものがケイ素を主体として誕生したケイ素生命体です。
しかし、MIT(マサチューセッツ工科大学)の科学者による分析の結果、ケイ素生命はやはりありそうもない、という残念な論文が発表されました。
なぜケイ素なのか?
ケイ素生命体はSFではわりと鉄板の設定で、海外のSF小説を始め、日本の漫画やアニメ作品でも多く登場します。
炭素に変わる生命のベースとして、ケイ素がもてはやされる理由はなんでしょうか?
炭素が生命のベースになるのは、その化学的な多様性です。
炭素は原子価が4つあり、さまざまな結合を行うことが可能です。そのため、生命のような複雑な有機物の高分子も生み出すことができます。
ケイ素が注目されるのは、ケイ素も炭素と同族であり原子価が4つあるためです。このことから、ケイ素でも炭素同様に生命となる高分子が生み出せるのではないかと考えられたのです。
ケイ素は基本的に地上では二酸化ケイ素などの鉱物の形態をとります。二酸化ケイ素の結晶は石英が有名です。学校のグラウンドなどにも欠片が落ちているので、見つけたことのある人は多いでしょう。
一方でケイ素は、シリコンゴムのような有機高分子も人工的に作り出すことができます。
このため、炭素生物に変わるケイ素生物がいてもおかしくはないのでは? という考えが生まれたのです。
ケイ素生命を有名にしたのは、SF作家のアイザック・アシモフです。彼は自身の短編『もの言う石』の中で、ケイ素生命体を登場させています。
ケイ素生命のイメージとして一般的なのは、岩石のような体で、原子量が増えるため動きが緩慢、高熱の惑星でも生活が可能、といったものです。
そして、空想の中で語られることの多かった、このケイ素生命体の可能性について、包括的な評価を行ったのが今回の研究です。