カエルは、世界中どこでも見られるポピュラーな生き物ですが、南極大陸には存在していません。氷に覆われた荒地にカエルの住む余地はないからです。
ところが最近、スウェーデンの国際研究チームにより、約4000万年前のカエルの化石が南極で見つかったと報告されています。
現生する両生類の化石が南極で見つかったのはこれが初めてです。
氷上を飛びまわるカエルの姿など想像もつきませんが、化石の分析から、当時の南極には今とまったく違う環境だったことが示されています。
さらに、カエルの化石は、かつての超大陸「ゴンドワナ」の存在も裏付けているのです。
横断不能な場所で見つかるのはなぜ?
化石が出土した場所は、南極で唯一、堆積物が氷土の下に埋まっていないシーモア島です。
見つかったのはカエルの頭蓋骨と骨盤の一部であり、それを調べてみると、南米原産のカエル属「カリプトセファレラ(Calyptocephalella)」にそっくりであることが分かりました。
しかし、現生するカリプトセファレラ属は、チリのアンデス山脈に生息する「Calyptocephalella gayi」という1種類しかいません。これに最も近い種は、遠く離れたオーストラリアに生息しています。
チリとオーストラリアの間に陸路はありませんし、カエルが大海原を泳いで渡れるわけがありません。「なぜ近縁種が遠く離れた2つの場所に存在するのか」、これが専門家にとって大きな疑問となっていました。
ところが、南極で見つかった化石が、この問題を解決してくれるのです。