鳥類の呼吸器系はどこから来たのか?
実は、この気嚢は鳥類特有のものではありません。遥か昔に絶滅した恐竜たちも気嚢を持っていたのです。
そのため、現在の鳥類は恐竜と同類、または分岐して進化したと考えられています。
さて、遥か昔から存在する鳥類の呼吸器系はどこから来たのでしょうか?
「NAUTILUS」は、シェルフィード大学古気候学の教授デビッド・ビアリング氏の著書「The Emerald Planet」やワシントン大学の天文学非常勤教授ピーター・ワード氏の著書「Out of Thin Air」を元に、「地球の酸素濃度変化への適応」という考えを提出しています。
約4億5千万年前、植物ははじめて海から地上へ上がってきました。それらは当初岩の表面のコケとして生きていましたが、100万年の月日を経て長い茎と葉を獲得。これを可能にしたのが、「リグニン」と呼ばれる炭素と水素からできた硬い分子です。
リグニンは木材中の20~30%を占めており、高等植物では生育に伴い組織内でリグニンが生産されます。
しかし、問題も生じました。当時のバクテリアたちはリグニンを分解できなかったのです。
そのため、1億年以上も木が枯れ、リグニンだけが地表に堆積していったのです。この時代は石炭紀と呼ばれています。
植物によるリグニン生成は光合成によって行われるため、二酸化炭素を吸収します。その時酸素は排出されますが、生産物のリグニンは分解されないまま残るのです。
これにより地球上の二酸化炭素濃度は減り続け、対照的に酸素濃度は上昇し続けました。
現在の大気中の酸素は21%ですが、約3憶年前には30%を超えてしまったのです。
そこで登場したのが、リグニンを分解できる白色腐朽菌です。
これはリグニン分解のプロセスで大気中から酸素を取り出し、炭化水素と結合させ、二酸化炭素と水を放出します。
腐朽菌の活躍により大気中の酸素濃度は激減。約2億5千年前には約12%にまで低下してしまいました。
これにより地球上の生物の95%は死亡。
しかし、ここで誕生したのが恐竜です。恐竜は現在の鳥類と同じ効率的な呼吸器システムを手に入れたので、限られた酸素でも生活できたのです。
そして、その後何千万年もの年月をかけて酸素濃度は20%までゆっくりと上昇していきました。
そのため、恐竜たちは象のように大きな体へと成長します。非常に効率の良い呼吸器系によって、大きな体でも隅々にまで酸素を届けることができたのです。
効率の良い呼吸器系は恐竜の大きな体を可能にし、その後の時代では鳥類の高度飛行を可能にしました。
「インドガンはエベレストを越えて飛べる」という身近な現象は、生物の構造の神秘を明らかにするものだったのです。
同様に他の身近な現象の解明・研究は、過去の謎を紐解く可能性があり、私たちに新たな繋がりを見せてくれるかもしれません。
最新の科学技術やおもしろ実験、不思議な生き物を通して、みなさんにワクワクする気持ちを感じてもらいたいと思っています。
Nazologyについて
記事一覧へ